■学生編
学校を卒業する際、どのような別れ方をするとよいか。
「学生の皆さんは、コロナ渦によりオンライン授業の実施や行事の中止など、これまでと違った学生生活となりました。友達とのコミュニケーションも取りにくかったはずです。そのような時間を共に過ごした友達は、悔しい思いを味わってきた同士でもありますね。卒業を機にお互い新しい環境へ進む同士たちは皆、期待と不安を抱えているでしょう」(神津さん)
卒業後も互いの近況を報告し、励まし合えれば心強い。そのためには、きちんと思いを伝えておくとよいとか。
「照れ臭いかもしれませんが、卒業式やその前のタイミングで、『心の支えになった』、『よい刺激になった』といった感謝の気持ちや、『これからも友人関係を継続したい』という思いを伝えてください。文章でもよいですが、最後のあいさつは相手の目をみて笑顔で伝えると、より強く印象に残りますよ」(神津さん)
卒業時に交わした言葉や笑顔により、それ以降も友好な関係を維持しやすくなるという。
■社会人編
社会人の場合は、対面でのあいさつが難しいことも少なくない。
「コロナ前なら異動や転勤、退職の際、職場や送別会などであいさつをすることができました。しかし現在はテレワークが多い上、事業内容の変更や組織変革による異動がイレギュラーで生じる場合もあります。あいさつする間もないまま職場を離れる事例も多いのです」(神津さん)
最終日までに、社内外でお世話になった方と会えないときはどうすべきか。
「社内の方への連絡は、最終日にBCCで一斉にお送りするとよいでしょう。社外の方へは異動や退職の2、3週間前に、現在の職場を離れる旨と後任の担当者、異動後の連絡先を伝えるとよいです」(神津さん)
テレワークをしている人は、荷物の整理や備品の返却等で出社する際にきちんと気持ちを伝えよう。
「会社のドレスコードにもよりますが、担当部署の方々へのあいさつはスーツ姿が好ましいでしょう。感謝の気持ちを込めてお菓子など渡すのも、このタイミングがベストです」(神津さん)
あいさつできなかった人には後日個別に連絡し、お詫びやお礼を伝えるのもよいそうだ。
■別れに備えた日頃からの心がけ
予期せぬ異動などで別れの瞬間が突然訪れた場合、どう振る舞うべきか迷うかもしれない。
「突然の別れに備え、参考にしていただききたい児童書があります。ハンス=ウイルヘルム作の『ずうっと、ずっと、大好きだよ』(久山太市訳、評論社)です。主人公『ぼく』が可愛がっていた愛犬エルフが亡くなり、家族は悲しみに暮れます。しかし『ぼく』は毎晩エルフに『大好きだよ』と伝え、その思いはエルフにもきちんと伝わっていたと感じていたため、後悔はなかったというお話です」(神津さん)
普段から気持ちを伝えていれば、別れ際のあいさつや振る舞いにこだわりすぎる必要はないということだ。
「今日が最後の日になっても悔いのないよう、いつ何時も、立ち居振る舞いや気持ちの伝え方などを意識して過ごすとよいでしょう」(神津さん)
別れ際のあいさつや振る舞いはもちろん重要だ。しかし、日頃から相手への思いを言葉にしておけば、相手とより分かり合うことができ、自分自身も後悔せずに済む。別れのときを待たずに、すぐにでも実践してみるとよいだろう。
●専門家プロフィール:神津 尚子(KOZUstyle)
(株)KOZUstyleイメージコンサルタント。エグゼクティブパフォーマンスインストラクター。パフォーマンス心理士。AICI国際イメージコンサルタント協会会員。文部科学省後援色彩検定1級取得。色彩コーディネーター。個性に合わせたイメージコンサルティングや色彩提案に定評がある。
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