■老後不安が長期の資産運用への関心に
まずは「つみたてNISA」や「iDeCo」が普及するようになった背景をうかがった。
「『つみたてNISA』も『iDeCo』も、長期スパンの資産形成を後押しするために用意された制度です。“老後2,000万円問題”などをきっかけに、将来への不安が若い世代に広がっています。30年ほど前なら、預貯金だけでも10年預けていれば残高は倍になりました。今はそんな時代ではありません。そのような不安が利用を後押ししていると考えられます」(小須田さん)
日本では一般に普及している「保険制度」も、同じく厳しい状況だという。
「当時の保険は『お宝保険』と呼ばれるほど予定利率(保険会社が契約者から受け取った保険料を運用する際に約束する利回り)の高い商品がたくさんありました。超低金利時代の現在では、そのような保険はありません」(小須田さん)
ひと昔前は預貯金や保険加入でも資産が増えていたが、今は投資などの手法で運用しなければ増えない時代になったのだ。
■投資制度のメリット・デメリット
不安定な老後の生活を保障するためにも、長期で投資を行う「つみたてNISA」や「iDeCo」のポイントは抑えておきたい。どのようなメリット・デメリットがあるのだろうか。
「どちらも基本的には、特定の投資信託を毎月購入する運用方法です。短期的な収益ではなく、5年から10年、それ以上といった長期での資産形成を目指します。メリットは運用益が非課税になる点です。本来運用で利益を出すと利益に対して約20%の税金を納める必要がありますが、この税金が非課税になります」(小須田さん)
さらに「iDeCo」は拠出金(投資金)分を自身の所得から控除でき、所得税の負担を軽減できるとか。
「デメリットは、両制度とも元本変動商品に投資を行うことです。つまり、運用状況によっては損失を生じる可能性があります。また『iDeCo』は運用できる年齢に上限がある点や、一度拠出すると60歳までは引き出せない点も注意すべきです」(小須田さん)
投資である以上、ある程度のリスクが伴うことは忘れてはならない。では、投資に不慣れな人の場合、どちらの運用方法が適しているのだろう。
「運用期間中に資金を引き出す予定がない人や、純粋に老後資金として検討している人なら『iDeCo』が向いています。先述のように、『運用益が非課税となる』、『拠出金分を所得控除できる』という2つメリットがあるためです。対して、運用期間中に引き出す可能性がある人は『つみたてNISA』からはじめることをおすすめします。専業主婦(夫)など所得税の支払いがない人にも、つみたてNISAが向いているでしょう」(小須田さん)
長期間での運用を計画している人には「iDeCo」、資金計画に変更が生じる可能性があり柔軟さを求める場合は「つみたてNISA」と、それぞれ特徴があることがわかった。人生設計と照らし合わせた上で、最適な資産運用法を選択したい。
●専門家プロフィール:小須田 徹(投資信託相談プラザ)
株式会社Fan IFA(資産アドバイザー)、プライマリー・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。 関西学院大学卒。政府系金融機関勤務を経てIFAに転身。東京丸の内店に在籍。日本人の金融リテラシー向上に寄与すべく活動中。投資初心者の若い世代から退職世代の方まで、幅広い年齢層のお客様の金融コンサルティングを行う。