■「大学入学共通テスト」の趣旨
これまでの「大学入試センター試験」とはどう違うのか。
「基本的に試験問題は、高校生活における学習内容を規定した『高等学校学習指導要領』をもとに作成されます。大学入試センター試験に比べると、大学入学共通テストは、正確な知識や解法、公式の暗記で解ける問題が減少し、高等学校における『主体的・対話的で深い学び』を考慮した問題が出題されました。『平成21年告示高等学校学習指導要領』において、育成することを目指す資質、能力を踏まえた、知識の理解の質を問う問題や、思考力、判断力を発揮して解くことが求められる問題が増加しました」(鈴木さん)
たとえば、どのような内容なのだろう。
「多くの図やグラフ、長い問題文などから情報を読み取る問題や、資料やデータに基づいて考察する問題、日常生活の中から課題を発見し、解決方法を構想するなど、“学習の過程”を意識した問題も導入されました。これらの内容を含むことにより、知識基盤社会の中で、新たな価値を創造していく力と、社会で自立的に活動していく力の育成を目指しています」(鈴木さん)
単に知識を問う問題を解く時代は終わったようだ。
■受験生に必要な準備
受験生は、どのような点に留意し準備するとよいのか。
「どの科目においても、一定の知識量が必要なことは変わりありません。受験校の配点に合わせて勉強する必要がありますが、有限な時間の中で、求められる全ての能力を身に付ける時間がないのが現実でしょう。本質を理解した上で暗記し、不明点は調べて解決し、基礎知識を定着させた上で、大学入学共通テスト形式の演習を積むことが大切です。知識を問うよりも、考える問題が増えたため、時間が足りなくなることが多くなるでしょう。日ごろから時間を意識して勉強に取り組むとよいでしょう」(鈴木さん)
テスト内容は変わったが、受験校の傾向をよく知ることは大前提だそうだ。
「一般選抜に関してですが、国公立大学は2次試験の個別学力検査で記述、応用力が求められます。多くの私立大学では、大学入学共通テストを利用しない独自の試験を受ける生徒が募集定員のほとんどを占めます。それぞれの大学の出題への対応が必要ですので、受験校の傾向を知り、戦略を練ることが重要です」(鈴木さん)
「大学入学共通テスト」ばかりに気を取られてもいられないようだ。
■受験生との接し方
親は子供任せっきりにせず、さまざまなサポートをしたほうがよいという。
「大学へ進学したら、将来の職業に直結する学部に進む可能性があります。子供たちにとっては、将来について考え、目標を立て、試験に向けて努力するのが受験期間です。その過程でお子さんが迷っていれば、親は情報の調べ方を伝え、話し合い、夢や目標を引き出し、サポートしてあげてください。入試形式や学部、学費、偏差値などは年々変動しますので、親御さんにも正確な情報を集めて頂きたいです」(鈴木さん)
家庭では「お子さんの意見に耳を傾けて欲しい」と鈴木さんは続けた。
「自分で考えさせ、その考えを尊重した上で、理由や具体例を挙げさせてください。そして、違った角度から物事を見るように促しましょう。これからは『いかに周りの人との違いを生み出せるか』に人間の価値が見いだされるようになる可能性があります。SNSや動画配信などの誘惑に負けない自制心を持ち、目標の大学や自分の理想像に近づく努力をするお子さんを、側で応援してあげて欲しいです」(鈴木さん)
情報化社会や少子高齢化、人口知能の発達などが進むこれからの社会を生き抜くため、子供たちには問題を発見し、他者と協力しながら解決していく能力が必要だという。受験生のいるご家庭では、親が子を見守り応援しながらどのようなサポートができるか、今後も更に模索する必要が出てきそうだ。
●専門家プロフィール:鈴木 優志(アクシブアカデミー)
AXIV ACADEMY(アクシブアカデミー)代表。東大生と共に過去問や参考書分析を行い、自校をはじめ全国の塾・予備校にも勉強法や分析結果を提供。高校や塾・予備校での講演実績も多数。著書「志望校に『合格する子』の親がやっている6つのこと」を2021年5月出版予定。