
■仲介手数料を払っても頼みたい「仲介業者」のメリット
そもそも部屋探しに仲介業者は必要なのだろうか? 直接交渉した方が安く契約できる気もするが……。
「仲介業者を通さないことで、たしかに仲介手数料を節約することができます。また、オーナーと直接交渉すると、詳細かつ正確な情報が得られます。家賃交渉などの細かな条件を話し合って決めることも可能です。オーナーの人柄や管理状況についても知ることができるかもしれません」(田中さん)
一方、不動産取り引きは契約手続きが煩雑かつ難しいため、やはり専門的な知識が必要だとか。「仲介業者を利用しないと、どうしてもトラブルなどのリスクが高まります」と田中さんは続けた。
「不動産仲介業者を使う主なメリットは、『物件探し』、『内見の手配』、『契約書の準備』などのすべてのプロセスを任せることができる点です。仲介業者は不動産市場に関する豊富な知識と経験、情報を持っています。一般公開前の物件情報を持っていることもあり、価格交渉、契約条件の理解、法的な問題の回避など、複雑な不動産取引をスムーズに進めることができるといえます」(田中さん)
上手に個人で物件を探すと仲介手数料は浮くかもしれない。しかし、よい部屋が見つからなかったり、契約手続きの途中でトラブルが起こったりすれば、無駄な時間を費やすことになりかねない。適切な物件を効率的に見つけるなら、仲介業者のサポートを受けることが賢明だといえるだろう。
■さらに情報が得られる、仲介業者との付き合い方
仲介業者とは、どのように付き合えばよいだろう。希望の物件を得るために、田中さんが会話のコツを教えてくれた。
「とにかくはっきりと受け答えすることです。まず、家賃や立地、間取り、設備といった、自分の希望条件をリストアップして伝えますが、すべての条件を満たす物件はなかなか見つかりません。そのような時に、“譲れない点”、“妥協できる点”などを明確に伝えることが重要です」(田中さん)
候補物件の内見後も、話し合いは大切だ。
「物件に不満があったら、具体的に説明してください。たとえば『駅から遠い』、『周囲が騒がしい』、『収納スペースが少ない』などです。それらは次の物件を見つける際の貴重な情報となります。気に入った物件なら、仲介業者にさらなる情報を求めましょう。物件の隠れた欠点、周辺の環境など、広告にはない詳細な情報を提供してくれることがあります」(田中さん)
ただ、自分と相性のよくないタイプの担当に当たってしまうケースもあるだろう。その場合は担当者を変更できるのか? 田中さんにたずねてみると……。
「担当者の変更は可能ですが、対面で会話するのが苦手であれば、コミュニケーション方法を変えてみるのもひとつの手段です。メールのやり取りを提案するのもよいですね。それでもうまくいかないのであれば、担当者を変更してもよいでしょう」(田中さん)
担当者の変更に抵抗がある場合、物件によっては複数の仲介業者が取り扱っている可能性があるので、その場合は入居申込書を記入する前なら、仲介業者ごと変えることもできるそうだ。
■条件のよすぎる物件には要注意?ブラック仲介業者の特徴
仲介業者の中には、怪しい営業を行っている、いわゆるブラック仲介業者もある。それを見極めるポイントを田中さんにたずねてみた。
「ブラック仲介業者の特徴でまず気を付けたいのが、条件のよい物件を広告にして顧客を引きつける『おとり広告』です。実はその物件は存在せず、問い合わせた顧客に“他にももっとよい物件がありますのでご紹介しましょうか?”などと誘導します。最初の問い合わせ時に、このような接客をする仲介業者には注意してください」(田中さん)
また、「やたら馴れ馴れしい」、「顧客の要望を聞かず、自社の都合のよい物件を強引に勧める」といった対応や、契約時に「予期しない費用を請求する」、「費用の内訳を明確に説明しない」仲介業者にも気を付けたいという。
「問い合わせ前に、インターネットで仲介業者の口コミや評判を調べると、ある程度、実態を知ることができます」と田中さん。
専門的な知識が必要な不動産取引の場面では、業者に頼り切ってしまうという人も少なからずいるだろう。しかし、自分の希望に沿う物件に出会えることが、最優先事項だ。今回伺ったことを参考に、物件探しから入居まで、スムーズかつ効率良く手続きをサポートしてくれる頼もしい仲介業者を選ぶようにしたい。
●専門家プロフィール:田中勲
レジデンシャル不動産法人株式会社代表取締役。宅建士などの不動産関連の資格を複数取得。仲介手数料と建物診断が無料のゼロシステムズを運営。不動産の専門家としてYouTubeチャンネル「田中勲の不動産の知恵袋」を運営しながらテレビ、ラジオにも出演。著書に「こんな建売住宅は買うな」幻冬舎がある。
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