
■乳幼児にお年玉をあげる意味って?
まずはお金の価値もまだ理解できない赤ちゃんや乳幼児に、お年玉をあげるべきなのか聞いてみた。
「お金の意味も分からない年齢である、0歳~3歳の子どもにお年玉をあげても、親の手に渡ってしまうと心配されるかもしれません。しかし私は、赤ちゃんにもあげてほしいと考えています。その年頃の場合、1,000円から2,000円ぐらいが望ましいでしょう」(安達さん)
安達さん曰く、実際にその子どもがお金を使うことよりも「お年玉を渡す」という行為そのものが重要だという。
「子どもがもらったものであっても、親が子どものために貯金したりおもちゃを買ったりと、お年玉を有効活用するでしょう。また、お年玉は日本文化の一つです。小さなころはお年玉を理解できなくても、大きくなるにつれて『赤ちゃんのときからもらっていたのよ』という会話ができます」(安達さん)
「お年玉をもらう」ということ自体が、日本文化に触れる貴重な機会にもなるのだと安達さんはいう。
■お年玉卒業のタイミングは「自立」
お年玉をあげはじめるタイミングも悩ましいが「卒業」のタイミングも難しい。例えば同じ「20歳」であっても、学生や社会人と立場もさまざまだ。
「20歳以上で、自分でお金を稼いでいるのであればお年玉をあげる必要はありません。ただ成人していても学生なら、お年玉がもらえることが多いでしょう」(安達さん)
お年玉の卒業タイミングは「自立しているか」で測ることができるという。成人していても、まだ親の世話になっている場合は、お年玉をあげるとよいだろう。
「昨年までもらっていたのに、今年はないの? と思われるのも嫌ですね。お互いにお年玉を交換し合う家族なら、親同士の話し合いをしておくのもいいでしょう」(安達さん)
親戚や友人ぐるみの付き合いがある場合は、大人同士で「あげる」「あげない」をあらかじめ打ち合わせをしておくのもよいだろう。そうすることでお互いに、親から子どもに対してフォローを入れやすくなるのだ。
■お年玉の起源は「お餅」
そもそも、なぜ大人は子どもにお年玉をあげるのだろうか。
「さかのぼれば、お年玉の起源は『お餅』です。年の初めに年神様にお供えしたお餅を『賜りもの』として半紙に包んで分け与えたのがはじまりです。お餅が起源といわれているので『お金ではなくお菓子やおもちゃでもいいのですか?』と聞かれることもあります。もちろん、相手に渡すのは自分の気持ちなので、お菓子でもおもちゃでも構わないと思います。ただ、お年玉が分かる年齢のお子様には、ポチ袋に入ったお金の方が喜ばれるでしょう」(安達さん)
お年玉に大事なのは、お金そのものよりも気持ちだ。
「大切なお金ですから、大人になるとお正月が怖いなんて思うこともありますが、あげる側ももらう側もお互いの『ほんの気持ち』を大切にすることが大事なのではないでしょうか」(安達さん)
お年玉による出費は、正直なところ懐が痛む。だが、自分も子どものころにお年玉をもらってきたと考えると、次の世代である子どもたちにお年玉をあげることは、文化を受け継いでいくことにもつながる。どうしてもお金に余裕のない場合は、代わりとなるお菓子やおもちゃを渡すというのも一つの手かもしれない。
●専門家プロフィール:一般社団法人 大和撫子和乃会
日本の心を大切にした「おもてなし」を研究する団体。企業や店舗に向けたおもてなし研修やビジネス研修を行う。講座や婚活パーティー、講演会などを定期的に開催。