
■報連相は迅速かつ明確に
まず、やってはいけない報連相があるというので、聞いてみた。
「報連相の目的は、業務に関わる人どうしが情報を共有することで、ミスを事前に防いだり、互いに協力しやすくしたりするものです。悪い例としては『要点や目的を整理していない』『時間や数値があいまい(お昼ごろできそうですなどの報告)』『聞かれるまで報告しない』『事実と意見が混ざっている(〇〇という情報を聞きましたが、私は△△と思います)』など。これらは、情報が伝わらない悪い例です」(石黒さん)
なるほど。「たぶん、昼ごろには終わります」など、うっかり口にしてしまいそうだが……確かに曖昧だ。ではどのような報告が望ましいのだろうか。
「よい例としては『話の内容や所要時間を把握できていること』『時間・数値などが明確であること(午後2時に提出します、最大で10㎏まで受け付け可能ですなど)』『タイミングよく迅速に報告し、長期にわたるものであれば、途中で経過報告をする』『事実と意見を分けること』です。推察を入れたいときには、はっきりと『私自身の考えをお伝えしてもよろしいでしょうか』と断り了承を得てから述べましょう」(石黒さん)
報告を定量的に行うと、具体的になりより明確に伝わるようだ。事実と意見を分けることで、推察している自分の意見も明確に伝えやすくなる。
■悪い報告ほど率直かつ正確に、早いほど訂正もしやすい
時には自分のミスを伝えなければならないこともあるだろう。どうしても後回しにしてしまいそうになるが……。
「ミスや、悪い結果についても迅速に伝えましょう。後にするほど言いづらく、訂正などの対応もしにくくなります。通常通り『申し訳ございませんが、〇〇の業務でミスが発覚しました』などと正確に伝え対処法を相談します。ほかの相談をする際も事前に資料やノートを見返し、すでに経験したり教わったりしている内容ではないかを確認し、自分なりの対応策を考えます。それからアドバイスをもらいたい内容を具体的にし、端的に質問できるよう準備してから相談しましょう。仕事の途中で疑問が出てきた場合も、自分勝手な判断で進めず、再び上司に伺い不安を解消してから仕事に取り組みましょう」(石黒さん)
仕事をしていると言いにくいことも出てくるが、ミスを隠さずに報告することで信頼が生まれ、社会人としても成長することだろう。
苦手な上司への報告はどうすればよいかも聞いた。
「『苦手』と感じるならその理由を考えましょう。『細かい指摘が多い』は『自分が気づかない部分も教えてくれた』などと視点を変えると、心にゆとりが生まれます」(石黒さん)
前向きにとらえることで、アドバイスを素直に受け入れることができるとのこと。
■機嫌の悪さを出さず、肯定的なアドバイスができる上司が理想
新人もいずれ部下をもつ上司になっていくことだろう。自分が報告や相談を受ける側になったとき、話しやすい上司になれるだろうか。受ける側に立ったときのアドバイスも聞いてみた。
「忙しさや機嫌の悪さを出さず、部下やチームの進捗状況をよく見ていて声掛けをしてくれる上司は相談されやすいでしょう。多忙さが表情や立ち居振る舞いに表れていると部下は気遣って相談しにくいものです。また、『○○さんは間違っている』などと人に焦点を当てた言い方をせず、『別の方法を検討してみないか』など、意見に焦点を当て肯定的なアドバイスができると部下は安心して相談できます」(石黒さん)
ドラマにありがちな気難しそうな上司にはなりたくない。また、同じ目標を持つ部下を否定してもよいことはなさそうだ。上司になっても部下だったときのことを思い出し、報告しやすい社風を守りたい。
●専門家プロフィール:石黒 真実
NPO法人日本サービスマナー協会認定マナー講師・コーチ。一般企業にて航空貨物営業・人事を経験後、キャスター兼記者を経て現職。「組織も自分も活かす」視点でマナーやコミュニケーションの研修を担当している。