
■寝る前の入浴が効果的
入浴のメリットを生かすには、タイミングも大切だとか。
「季節の変わり目は気温の変化、朝晩の気温差で自律神経が乱れ、風邪なども引きやすくなります。健康の基盤となる自律神経や体温を整えるのであれば、睡眠前の入浴が効果的ですね」(古谷さん)
ここ数年、「寒暖差疲労」のみならず、「気象病」や「低気圧不調」といった、気圧変動による不快症状が増えているという。1年の中で最も寒暖差の大きい3月から5月、梅雨から本格的な夏に向かう6月から7月月、残暑や小春日和で気候が不安定な9月から11月は不調が出やすいとか。
健康管理のための入浴には、“就寝前にお風呂”と決めておくことが、長期的に自身の体調を保つことにもつながるだろう。
■入浴は自分の体調と相談しながら
季節の変わり目の不調を改善する、特別な入浴法はあるだろうか。
「その日の体調に合わせて入浴時間などを調整すべきかと思います。基本的にはある程度時間をかけます。たとえば“10分以上浸かる”など、ゆっくり入ることでしょう」(古谷さん)
ネットや書籍をはじめ、いろいろな媒体でおすすめの入浴法や入浴時間は紹介されている。その情報をうのみにしてのぼせるなどしないよう、自分の体調を優先するのが効果的とのこと。
■入浴後、湯冷めをせず就寝するには
入浴後、気をつけたいのは「湯冷め」だ。入浴で上がった体温を元に戻すため、広がった血管がそのままになり、汗が蒸発して必要以上に体温が奪われることで起こる。風邪や病気の原因にもなりうるため、なるべく避けたいが対策はあるのだろうか。
「一度上がった体温は、入浴後はまもなく下がっていきます。同時に入浴後30分は、皮膚の毛細血管に血液が集まり内臓への血液の供給量が減るため、食べることは好ましくありません。ゆえに温かい飲み物がお薦めですが、緑茶、紅茶、コーヒーなど、カフェインが入っているものは避けてください。また、着衣などで身体が冷えないようにすることも大事です」(古谷さん)
せっかくよいタイミングで入浴しても、湯冷めをしてしまっては本末転倒だ。対策として、「入浴剤を使用する」「浴室で体や髪の毛を拭く(体や髪の毛が濡れたまま放置しない)」といった点も気をつけておきたいポイントだ。
入浴の効果はわかっていても、「仕事に疲れて、帰宅後すぐに寝てしまう」「面倒くさいからシャワーで済ます」というケースは多いだろう。昨今は「お風呂カフェ」や「スーパー銭湯」などの温泉施設も充実しているので、それらを活用しながら入浴の楽しみを見出すのもよいかもしれない。健康のためにも、今回のお話を参考に、できるだけ入浴を心がけたいものだ。
●専門家プロフィール:古谷暢基
博士(医学)、日本で数少ないお風呂の専門家。日本入浴協会理事(「入浴検定テキスト」執筆責任者)、一般社団法人和ハーブ協会代表理事など講演、TV出演多数。著書 『入浴検定テキスト』『和ハーブ図鑑』『カルボナーラとペペロンチーノどっちが痩せる?』『寝るだけダイエット』など多数。
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