
■民泊ニーズから生まれた新法
まず、そもそも民泊とは何かを聞いてみた。「民泊とは、法的に明確な定義はありませんが、広義には、ホテルや旅館ではなく、それ以外の住宅等を活用して人を宿泊させる事業のことです。日本で民泊を行おうとする場合、これまでは旅館業法上の簡易宿所の許可の取得や、国家戦略特別区域法に基づく認定を受ける特区民泊などの方法がありました。しかし、これらのルールに則らないまま、住宅に人を宿泊させる民泊事業が実態として広がってきていることから、今後は、新たに『住宅宿泊事業法』に基づく届け出を行う方法が追加されることとなりました」(鈴木さん)
では、民泊に関する法律は、どのような背景から生まれたのだろう。
「近年、訪日外国人の増加に伴い、キッチンや洗濯機がある広めの部屋に安い価格で長期間宿泊したいというニーズが増えてきました。海外では既に、一般のマンションや住宅を貸し出すマッチングサービスなどが多く存在します。また、提供側としても資産を有効活用できるため、日本でも徐々に民泊が広がってきました。しかし、これらは本来必要な許可や認定を得ていない施設も少なくなく、騒音やゴミ出しなどで周辺住民とのトラブルが多いのが現在の実態です。今後、住宅宿泊事業の届け出を行えば正規に民泊を行うことができます。様々なルールの下での運営を求めることで、社会の民泊に対する不安にしっかりと応えていく必要があります」(鈴木さん)
周辺住民に対して民泊実施をオープンにし、利用者にもルールを守ってもらうことが必要なのだ。苦情に対しても真摯に対応し、両者に納得してもらえる運営をすることが求められるという。
■行政に届け出をすることが必要
次に、新法施行のスケジュールについてお尋ねした。「2018年3月15日から住宅宿泊事業法が、まず準備行為について施行されました。準備行為とは、法律全体の効力が発生する6月15日の本施行を前に、事業を開始しようとする方が必要な届け出や登録の申請などを行うことです。細かい内容については、法律やガイドラインなどにまとめておりますので、そちらをご参照頂き、円滑に届け出ができる準備をして頂ければと思います」(鈴木さん)
ガイドライン等を見る前に、空室のマンションや家屋を持っていれば、そもそもそれを民泊用の施設として提供することが可能なのか聞いてみた。
「マンションの場合、施設の管理規約で禁止されるケースも出てくると考えられますが、いくつかの条件を満たしていれば基本的には可能です。ただし、管理規約の中で『住宅宿泊事業が禁止されていない』ことを確認できる書類などを添付して頂く必要があります。また、一戸建ての場合でも、条件を満たしていれば基本的にはOKですが、一定の衛生基準や安全基準を満たす必要があります。その他、人を宿泊させる以上、消防法などの基準があるため色々な条件をクリアすることが必要です。利用者の方もボロボロの家ではなくて、やはり衛生的で安全な住宅に宿泊したいですよね」(鈴木さん)
民泊を運営する場合、宿泊者が物を破損したり、逆に部屋の中で宿泊者がケガをしたりすることがあるため、保険に加入するのがおすすめだそう。また、現状利用者の多くが外国人という点も忘れてはならない。

■民泊のポータルサイト
今後自分も民泊を運営したいという人が増えてくることが予想される。そういう人達が情報得られる場所はあるのだろうか。
「法律やガイドラインだけでなく各自治体の条例など色々なルールがあります。政府では2月末から『民泊制度ポータルサイト』を立ち上げました。各自治体の情報なども確認でき、随時更新していきますので、こちらをご確認頂ければ、全体像を理解するのに役立つのではないでしょうか」(鈴木さん)
民泊に興味がある人は要チェックだ。更に、民泊をはじめたい人向けに便利なサービスもあるという。
「住宅宿泊事業を開始する際には、法律に基づく手続きが必要となります。実際にはじめた後も、宿泊者名簿を作ったり、2か月毎に宿泊者数などの実績を報告しなくてはいけません。こうした作業を効率化する手段として、『民泊制度運営システム』という総合的な電子システムを構築しております。届け出を考えられる際には、このシステムを活用して頂ければ、その後の手間が省けるかと思います」(鈴木さん)
運用についてもきちんと考えておく必要がある。是非活用したい。
民泊を普及していきたい一方で、民泊に対する悪いイメージがあるというのも事実である。これまで放置状態だったものを適正化することで、民泊事業が健全に育っていくことが大事のようだ。今後は、大企業がプレーヤーとして民泊事業に参入する可能性もあり、市場が更に活性化していくことが予想される。