
■セーターとニットの違い
両者は、「ズボンとパンツ」や「ジーパンとジーンズ」のように同意語なのか。あるいは、明確な違いがあるのか。
「『セーター(sweater)』は、英語で汗を意味する『スウェット(sweat)』が語源の、 “汗をかかせるほど”暖かい、編み物で作られた上着の総称です。日本でセーターといえば、前後に開きがなく、頭からすっぽりと被って着る『プルオーバー』のことを指すのが一般的ですが、本来は『カーディガン』なども含めたトップス全般をセーターと称します」(北方先生)
プルオーバーもカーディガンも「セーター」だったとは驚きだ。では「ニット」は何を指すのだろうか。
「『ニット(knit)』とは、ポルトガル語で『ジャージ』を意味する『メリヤス生地(天竺生地)』の総称であり、『編み物全般』のことを指します。ニットの語源は、編むことを意味する『ニッティング(knitting)』を簡略化したものです」(北方先生)
セーターをはじめ、編み物で作られた帽子や手袋、靴下、スカートなども「ニット」であることが分かった。
■ニットの歴史
「ニットは、伸縮性やドレープ性、柔軟性などに優れていることが特徴」と北方先生。暖かく動きやすいニットの歴史についても教えてもらった。発祥は、紀元前にさかのぼるそうだ。
「紀元前のエジプトで既にニットが知られていました。その後、14世紀前半にヨーロッパで広く愛用されるようになり、当時は手編みの靴下が主な製品でした。日本にはポルトガル人が九州に渡来した1543年に、手編みの靴下や手袋などが伝えられました」(北方先生)
ニットには古い歴史があった。その後19世紀頃より、上着が「セーター」と呼ばれるようになったようだ。
「1910年代後半には、主に女性がスポーツウエアやリゾートウエアとして、脱ぎ着が手軽なカーディガンや、身丈の長いチュニック型ニットを着るようになり、それら上着を『セーター』と呼んで分類するようになりました。1960年代以降、ニット産業はさらに発展し、1970年代には気楽に身に付けられるカーディガンやウールのスカート、ニット帽が流行し、ミッソーニやソニア・リキエルなどのニットブランドも登場しました。19世紀後半から20世紀はじめにかけては、スポーツの発展に伴い、防寒や動きやすさ、発汗作用促進のため、スポーツ選手がセーターを着用し、スポーツウエアとしてファッション化していきました」(北方先生)
有名なシャネルのスーツも、原型はニットで作られていたとか。セーターの発展には、スポーツやファッションブランドが大きく関わってきたようだ。
「1980年代は、女性のボディラインを強調するボディコンブームの到来により、ボディコンニットの重要性が増していきました。それに伴いフィットネスも流行し、より一層スポーツウエアがファッションに浸透していきました。スポーツウエアから発展したニットは、カジュアル化の流れと相まって、この20年~30年の間に重要なファッションアイテムとなりました」(北方先生)
ボディコンファッションやスポーツウエア、日々のカジュアルとして、ニット製品を身に着けてきたという人も多いだろう。
今冬も、そんな動きやすいニットをさまざまなシチュエーションで活用し、暖かく快適に過ごしたいものだ。
●専門家プロフィール:北方 晴子
文化学園大学教授。文化女子大学(現:文化学園大学)家政学部卒業後、メンズアパレル勤務を経て、1996年より文化学園大学勤務。専門は、服飾文化史、西洋服飾史、西洋染織史など。