
■適度なおやつは心身に好影響を与える
「おやつ」は、もともと一日2食だった奈良~平安時代に、朝夕の間に食べる軽食から始まったともいわれている。古くから続いているからには、何らかのメリットがありそうだが……。
「適度におやつを取り入れることは、太りにくい身体作りという点においてもおすすめします。食べ過ぎを防ぐと同時に、夕食を無理なくヘルシーなものにできるメリットがあるからです。というのも、昼食と夕食の間隔があくと、夜には腹ペコ状態になり、脳から次の食事で補うように信号が出ます。その結果、食べ過ぎてしまうのです。ついこってりしたものを選びがちにもなり、太りやすい食事になってしまいます」(山村さん)。
おやつは血糖値の変化にも関わってくるというので、さらに聞いた。
「空腹時間が長くなると血糖値は下がり続けます。その状態で夕食をとると血糖値が急上昇し、体内にも急激な変化が起こります。おやつは血糖値の動きを緩やかにするため、肥満・生活習慣病の予防につながり、また、『リフレッシュできる』『疲れがとれる』などの気分転換にもなります」(山村さん)。
精神的な面でのメリットも見逃せないポイントなのだ。
■効果的なおやつのとり方と、おすすめの食べ物
さまざまなメリットがあることがわかったが、どのような食べ方が心と身体に効果的なのだろう。
「1日の総摂取カロリーが増えてしまっては逆効果ですから、太らないポイントを押さえて食べることが大切です。成人女性であれば、3食+おやつで2000kcalに収まるくらいが理想と考えると、おやつは1日200kcalくらいまでを目安にするといいでしょう。1日1回ではなく、複数回食べでも1日の合計で200kcalくらいまでならOKです」(山村さん)
食べるものは「おやつ=補食というイメージをもつことです」と山村さんは続ける。
「不足しがちな栄養のバランスを補うと考えて、たんぱく質、食物繊維、カルシウム、ミネラルなどが豊富なものを選びましょう。空腹感からの過食を防ぐためには、腹持ちのよい食材を組み合わせるとよいでしょう。たとえば食物繊維、ミネラル、ビタミンB1、ビタミンEなどが豊富な『ナッツ(1日20粒程度)』『ヨーグルト・チーズ・卵』『ビターチョコレート』など、たんぱく質と脂肪を一緒にとるのがおすすめです。ここに『果物』を加えると、食物繊維やビタミンも補え、より効果的です。『ビターチョコレート』は、糖分や脂肪が多くなり過ぎないよう、カカオ70%以上の商品を選んでください」(山村さん)
いくら身体によいといっても食べ過ぎは禁物。バランスを意識したい。
■年齢や仕事内容によって工夫が必要
最後に、年齢や仕事内容によってどのようなおやつがよいのか聞いた。
「子どもと大人では身体の作りや運動量が違います。子どもは成長期で運動量が多い一方、大人は仕事によってはデスクワーク中心の人もいるため、生活スタイルに合わせてカロリーを考え、栄養素を選ぶとよいでしょう。子どもの場合、市販の甘いお菓子やスナック菓子を与えてしまいがちですが、砂糖の甘さに慣れてしまうと、野菜本来の甘みやだしの旨味を物足りなく感じるようになってしまいます。また、肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めるので、食べ過ぎには注意が必要です。よく身体を動かす子には、エネルギー源となる炭水化物に加え、筋肉を作るたんぱく質や骨を丈夫にするカルシウムを補えるおやつを選ぶのがおすすめ。柔らかいものではなく、よく噛んで食べられるものだとさらによいです」(山村さん)。
デスクワーク中心の大人におすすめの食べ方も聞いた。
「デスクワーク中でも、パソコンや書類業務を行うと強い空腹を覚えることがあります。これは脳が思考活動することでぶどう糖を消費し、血糖値が下がるためです。しかし身体を動かしているわけではないため、体重増加を防ぐためにも、高カロリー食品の摂取は避けましょう」(山村さん)。
逆に身体を動かす、汗をかきやすい職業であれば、塩分やミネラルを多く取ればよいだろう。
自分の生活に合わせてカロリーや栄養素を考慮すれば、おやつは心と身体にプラスといえる。上手に活用し、よりバランスのとれたストレスのない食生活を送りたい。
●専門家プロフィール:山村有利佳
ソフィアプロモーション 所属の管理栄養士。ソフィアプロモーションは全国毎月1万店舗で「おいしい~食育」を広めている。管理栄養士ブログも運営。