
■甘いイチゴは品種改良のたまもの?
以前に比べると、甘いイチゴが増えたと感じている人もいるかもしれない。イチゴの品種がここまで増えたのはどうしてなのか。
「各研究機関、自治体、生産者が、お客様目線のニーズに応えていった結果だといえるでしょう。よりおいしく、品質のよいものを目指して試行錯誤し、このように品種が増えたと考えられます」(太田さん)
イチゴが甘くなったのも、品種改良による成果だろうか。
「イチゴの甘さは、生産技術の進歩によるものが大きいです。具体的には、植物にとって最も大切な『光合成』を“生産者としていかに効率的にサポートできるか”の研究が進みました。適切な温度、CO2濃度、光の量について、各生産者が様々なチャレンジをしています。また、土や水、微生物、ミネラル等の微量要素に対する研究が日進月歩の進化をしており、収穫量、質ともに向上しています」(太田さん)
現在でも十分な数の品種があるように思うが、これからも品種は増えていくのだろうか。
「召し上がる方が“おいしい”、“楽しい”と感じるものは増えていくと思います」(太田さん)
甘さだけではなく、様々な風味のイチゴが現れるかもしれない。これから出てくる新品種も楽しみだ。

■海外では、野菜として扱われている?
日本ではイチゴはデザートの代表格だが、海外では野菜として使われることもあるという。
「海外ではサラダを中心に野菜としての消費も多くあります。フレンチやイタリアンではサラダ以外にも、お肉のソースとして使われたりします。甘さと酸味のバランスがよいイチゴは、様々な料理に使われていますよ」(太田さん)
具体的に、どのような料理に使われているのだろうか。
「酢豚のパイナップルの代わりに使われていたり、日本食だとお寿司の酢飯に使われたりすることもあります。料理に使う場合は、イチゴの酸味を生かして手を加えることが多いですね。完熟前のイチゴをあえて収穫し、サラダに使ったり、ピクルスにしたりすることもあります。生ハムメロンのように生ハムとあわせ、バルサミコ酢やジェノベーゼソースと組み合わせてもおいしく食べられます」(太田さん)
現在、日本で生産されているイチゴは糖度が高くデザート向きで、スイーツに使われることが多い。「今後は、イチゴの甘みを生かした料理の可能性もあるのでは?」と太田さんは楽しみにしているそう。

■傷んでいてもおいしく食べる方法
イチゴの表面は柔らかく、傷むのが早いイメージがある。
「イチゴは追熟する果物ではないので『新鮮さ』が大切です。鮮やかで、つやのあるものが新鮮な証拠です」(太田さん)
持ち帰る途中で傷つけてしまったり、重みで下の方が傷んでしまうこともあるが……。
「もし傷んでいても、冷凍したり加熱したりすることでおいしく食べることができます。冷凍する場合は、へたを取って使いやすい量に小分けしておくのがおすすめです。加熱する場合は、火を止める前にレモンなどの酸味を少し加えると、味が引き立ちおいしく食べられますよ」(太田さん)
冷凍や加熱が可能であれば、より買いやすくなる。旬の時期にいろいろな種類を購入し、食べ比べるのもよいだろう。
消費者ニーズに合わせ変化を遂げてきたイチゴは、品種だけでなく食べ方も多様であることが分かった。今回のお話を参考に、そのまま味わうのはもちろん、いつもと違う調理法で楽しんでみてはいかがだろうか。
●専門家プロフィール:太田啓詩
いちご家族®︎ 代表。福島県にて2020年よりイチゴ農家を全くの素人から新規就農。前職は外資系製薬会社 栽培収穫するイチゴの全てを予約販売している。イチゴを使ったソフトクリーム専門店を併設。 まもなく「菓子スイーツ事業」を開始予定。インスタグラムでも情報発信中。
画像提供:太田亜寿沙さん