教えて!gooでも「意味がわからん。なぜ物価高対策で所得税減税なのか?」というタイトルで定額減税について質問が投稿されている。
そこで今回は元国税調査官の松嶋洋税理士に、定額減税の概要や対象となる方、注意事項について話を聞いてきた。
■定額減税とは
まずは定額減税がどのような制度なのか伺った。
「長引くデフレ対策として、令和6年度改正で設けられた減税措置です。一定の要件を満たせば基本誰でも受けられるもので、政策減税のように細かい要件はありません。給付金とは異なり、令和6年6月からの源泉徴収で税額と相殺されたり、確定申告や年末調整のタイミングで1年分納めるべき所得税から控除されたりする形で還元されます」(元国税調査官・松嶋洋税理士)
■定額減税の対象者や減税額
次に定額減税の対象となる方の条件や減税額を聞いてみた。
「日本に住所がある居住者で、合計所得金額1805万円以下(給与のみであれば年収2千万円以下。所得税は令和6年、個人住民税は令和5年の実績で判断)の方が対象になります。このため、国外に住所があり、日本で納める税金が限られている非居住者は対象外ですし、一般的に富裕層と言われる方も対象になりません。所得税と個人住民税、それぞれの計算で減税されることとされており、所得税の減税額は本人が3万円で、居住者である配偶者や扶養親族が一人につき3万円です。一方で、個人住民税はそれぞれ1万円とされています」(元国税調査官・松嶋洋税理士)
納税者・配偶者・子の3人家族の場合、1人につき4万円減税される。つまり世帯での減税額は12万円になるため、単純に手取りが12万円増える計算となる。
■定額減税の注意事項
最後に定額減税の注意事項を伺った。
「定額減税とされているように、この措置は減税措置であり、給付金の支給ではありません。給付金なら基本は自治体がやってくれますが、減税は税金のため、私たちが自己責任で計算する必要があります。定額減税は、6月以降の源泉所得税の計算と、1年まとめての年末調整での計算と2つの段階でそれぞれ計算する必要があります。このため、計算方法はもちろん、対象となる扶養親族などの判定も、それぞれ異なっています。結果として、非常にミスが起こりやすい制度になっています。その計算ミスは納税者の責任ですので、慎重に処理する必要があります」(元国税調査官・松嶋洋税理士)
冒頭で「減税は嬉しい。でも定額減税には素直に喜べない」と述べたが、その理由が明らかになった。松嶋洋税理士の言うように、給付じゃなかったからなのだ。給与所得者はそこまで心配する必要はないかもしれないが、個人事業者はくれぐれも気をつけていただきたい。
●専門家プロフィール:元国税調査官・税理士 松嶋洋 税務調査対策ドットコム Twitter Facebook
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在の専門は元国税調査官の税理士として税務調査のピンチヒッターと税務訴訟の補佐。税法に関する著書、講演、取材実績多数。
記事提供:ライター o4o7/株式会社MeLMAX
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