
■愚妻や家内はふさわしくない呼び方?
一口に配偶者を指す言葉といっても、時代によりさまざまな呼び方がある。それぞれどのような意味があるのか住吉さんに聞いてみた。
「『奥さん』や『奥様』は、相手の配偶者について話す際に使う呼び方です。人前で『うちの奥さんが』のように話すのは、違和感があります。『カミさん』は『上さん』と書き、本来は商人の妻のことを指します。昔のドラマを連想させてしまうような呼び方で、若い人はあまり使わないはずです。『家内』は本来、家の中で暮らす人全般を指します。囲われているような、あまりよろしくないイメージが湧いてしまいますね。また、今はあまり耳にしませんが妻のことを『愚妻(ぐさい)』と呼ぶこともあります。謙遜の意味合いであったとしても大変失礼にあたりますし、おすすめできません」(住吉さん)
「愚妻」や「家内」という古く使われていた呼び方は、現代社会では使用するにふさわしくないと考えてよいだろう。公の場で使うイメージが強いが、男尊女卑の印象を与えかねないからだ。
「私の経験上、比較的若い男性から『ヨメ』という呼び方をよく聞きます。照れ隠しの部分もあるのでしょうが本来『嫁』は『息子の配偶者』のことを指します」(住吉さん)
コネタでも議論になった「嫁」という呼称。住吉さんいわく、配偶者本人に「あなたの嫁じゃない」と、不快な思いをさせてしまう可能性があるので避けたほうがよいとのこと。
■さまざまなシーンで使える「妻」
では、配偶者のことはどのように呼ぶのが適切だろう。正解とされる呼称はあるのだろうか。
「家族や親族、仲の良い友達の前なら『名前』で呼ぶのも親しみが湧いてよいでしょう。お相手が、配偶者のことを知っているかどうかでも、呼び方が違ってくる場合があります」(住吉さん)
親しい者同士の場合は、配偶者を呼称で呼ぶこと自体、不自然のようだ。共通の友人知人がいる場合は、名前で呼ぶのもよいだろう。
「フォーマルな場では、『嫁』や『奥さん』を使うことはあまりおすすめできません。支配的なイメージを持つ場合もあるように思います」(住吉さん)
ではなんと呼べばよいのだろう。
「『妻』という呼び方が無難でしょう。私自身、男性から相談を受ける場合に『妻に~』と話していただけると、すんなり受け入れやすいです」(住吉さん)
さまざまな呼び方がある中、ほとんどが悪い印象を与える恐れがある。「妻」を使うのが最適のようだ。
■配偶者の呼び方で変わる印象
ここまで夫から妻への呼び方について触れてきたが、妻から夫への呼び方も気になるところだ。
「妻からの呼び方としては、主人、夫、旦那、亭主などがありますね。『主人』は貞淑(ていしゅく)な奥様のイメージ、『旦那』は夫婦同等なイメージを与えやすいでしょう」(住吉さん)
夫の呼び方は、相手から「どのような印象を抱かれたいか」という観点で変えるのがよいかもしれない。
「最近では性別に関わらず、SNSなどで『相方』や『愛方』、『パートナー』などという呼び方を見かけます。個人的には少し抵抗がありますが、籍に関係なく使え便利です」(住吉さん)
いろいろな呼び方がある中、『夫』と『妻』という呼び方が、身分の上下も感じさせず、公共の場でも無難に使いやすいことがわかった。夫婦関係が悪くなる前に、呼び方に心当たりがあるなら、正してみてはいかがだろう。
●専門家プロフィール:住吉久子
夫婦問題カウンセラー。対面・電話カウンセリングを行い、夫婦関係、離婚、不倫などの相談にのってきた。2011年に「夫婦問題相談室リカプル」を開室。