■管理栄養士が解説!押さえておきたい3つのポイント
お話を伺ったのは、一般社団法人健康栄養支援センターの臨床栄養部部長、加藤里奈さん。
「これまで、食品表示に関しては『食品衛生法』、『農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)』、『健康増進法』という異なる3つの法律により整備されていました。その中の義務表示の部分において複雑でわかりにくかったルールを一元化し、用語も統一したものが食品表示法です」(加藤さん)
特に大きな変更点は、(1)栄養成分表示の義務化、(2)アレルギー表示の改善、(3)「機能性表示食品」の新設の3点。
「(1)栄養成分表示とは、どんな栄養成分がどのくらい含まれているのかを一目で分かるようにしたものです。これまで事業者の任意により行われていましたが、新食品表示制度では、原則としてすべての加工食品と添加物に栄養成分表示が義務づけられました。表示義務のある栄養成分等は、熱量(エネルギー)、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムの5つ。このうち、ナトリウムは、原則として食塩相当量に換算して表示されます」(加藤さん)
ただし、包装面積が小さい商品や酒類、極めて短い期間で原材料が変更される商品など、栄養成分の表示を省略できる場合もある。
「(2)アレルギー表示の改善は、アレルギー物質を原料ごとに表示する『個別表示』が原則になります。また、これまで表示が義務づけられていなかった特定加工食品も、『マヨネーズ(卵を含む)』、『パン(小麦を含む)』などの記載が必要になりました」(加藤さん)
近年、卵を使わないマヨネーズ風調味料や米粉を使ったパンなど、アレルギー物質が入っているかわかりにくい加工食品が増えたため、こうした流れになったようだ。
「(3)の機能性表示食品とは、一定の科学的根拠に基づき、健康の維持や増進に役立つことが期待できるという『機能性』を、事業者の責任において表示できる食品のこと。加工食品やサプリメント、野菜や果物などの生鮮食品も対象です。容器包装やパッケージの主要な面には、機能性表示食品であること、消費者庁への届出番号、届出表示の3点が表示されます」(加藤さん)
これまで機能性の表示が認められていた「特定保健用食品」や「栄養機能食品」以外で、「糖や脂肪の吸収をおだやかにします」といった文言を入れることが可能になったというわけだ。
■消費者にとってのメリット&注意点
消費者のメリットを一言で表すと、食品や成分に関する知識がなくても商品が選びやすくなった点にある。
「より正確な栄養成分が把握できることで、健康管理や生活習慣病の予防・改善にも役立ちます。また、アレルギー表示は、アレルギーを持つ消費者にとっては必須の知識。複数の食品が詰め合わされて一つの商品となっているような場合でも、正確なアレルギー情報がわかるようになりました」(加藤さん)
しかし、便利になった一方で、注意点もある。
「パッケージや宣伝文句だけに惑わされず、その中身についてより深く知ったうえで食品を選ぶことが、これまで以上に大切になります。また、機能性表示食品のほか、特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品にもいえますが、これらはあくまで食事の補助をするもの。普段の食事が乱れていては、機能性成分本来の働きは期待できません」(加藤さん)
トクホの烏龍茶を飲んだだけでダイエットをした気になっている人は要注意だ。
「そもそも機能性表示食品は、非常に多くの商品が市場に出回っていますが、トクホのように消費者庁の審査・許可を受けたものではなく、その科学的根拠はあくまでも事業者に委ねられています。安全性や機能性の根拠などの情報は消費者庁のウェブサイトで公表されているので、購入する前に確認し、注意して選びましょう。また、過剰な摂取が健康に害を及ぼす場合もあります。表示されている摂取量や摂取方法などをよく読み、体調に異変を感じたときは、ただちに摂取を中止して医師に相談してください」(加藤さん)
4月から、一部を除きすべての商品が新しい食品表示法による表示となる。日々の健康管理のため、くまなくチェックしよう。
参考:政府広報オンライン
●専門家プロフィール:加藤里奈
一般社団法人健康栄養支援センター 臨床栄養部部長。予防医学をテーマにしたクッキングの開催や、行政・企業等主催による各種講演会、栄養相談などを多数行う。
(酒井理恵)