![示談は書面なく口頭だけで成立する?示談の撤回は可能?弁護士に聞いてみた!](http://oshiete.xgoo.jp/_/bucket/oshietegoo/images/watchmain/6/195740_5e9fd67a240f9/ORG.jpg)
「教えて!goo」に「示談は撤回できないと弁護士に言われました。」という質問が寄せられているが、質問者は端的に、示談は撤回できないのかと問うている。回答は様々で、知事の問題とは少々異なるが、示談の撤回は可能なのかどうかを富士見坂法律事務所の井上義之弁護士に聞いてきた。
■ 示談に書面は必要か否か
まずは示談が成立するための要件を聞いてみた。
「紛争の当事者が裁判外で和解する場合などに『示談』という言葉が用いられます。示談は、通常、民法上の和解契約(695条)と位置付けられます。和解契約の成立要件は、(1)当事者間に争いがあること、(2)互いに譲歩すること、(3)一定の法律関係を定める合意をすることですが、(1)と(2)の要件は緩やかに解されています。当事者が口頭で合意に達した時点で成立し、示談書などの書面作成は成立要件ではありません。示談が成立すると、争いのあった法律関係が確定し、原則として当事者は合意内容に拘束されることになります」(井上義之弁護士)
書面は必要なく、口約束で効果を発揮するという。これには筆者も驚いた。
■ 示談は撤回できるのか?
口約束でも示談は成立するとなると、言った言わないの問題が生じそうだ。それが原因で示談を撤回したいという申し出がでてきたとしてもおかしくはなさそうだが、果たして撤回は可能なのだろうか。そして可能だった場合に、どんな条件が必要なのだろうか。
「公序良俗に反する場合や当事者間で争いのない事実とされていた事項に誤解があったケースなどでは和解が無効になる余地があり、詐欺や脅迫を理由に取消し得る場合も考えられます。また、無効や取消しとは異なりますが、交通事故の示談に関して当時予測できなかった後遺症が生じた場合については、示談が成立していても、別途、その点の損害賠償を求めることができる旨の最高裁判例があります。もっとも、和解は終局的な解決が目的であり、簡単にやり直しできたら和解の意味がありません。無効・取消し等の主張立証は容易ではなく『一度示談したらやり直しは難しい』と考えておくべきです」(井上義之弁護士)
条件付きで撤回は可能とのこと。がしかし、そもそも撤回の余地を残すくらいなら示談はしないほうがいいようだ。つまり示談の撤回はかなり難しいと思っておいたほうがいいだろう。
■ 示談するべきかで悩んだらどうすればいい?
では最後に示談するべきかどうかの判断を聞いてみた。
「一般に、示談は、裁判手続を利用するよりも、手間や費用が少なくすみます。従って、通常の紛争解決においては、さしあたり示談を目指して交渉することになります。そして、損害の状況、示談の条件、裁判した場合の手間暇費用・結果の見込み、相手の支払能力などを総合的に考慮して示談するのが合理的な場合は示談、そうでなければ裁判、というのが基本的な流れになります。既にご説明した通り、示談はやり直しが難しいのでくれぐれも慎重な判断が求められます。弁護士は、示談するべきかどうかも含めて助言しますので、一度は弁護士に相談してみるべきだと思います」(井上義之弁護士)
メリット・デメリットやリスク・リターン、結局これで判断するしかないようだが、法的な事情も絡むため、難しいと感じた場合は弁護士に相談するのが良いだろう。
■ 覆水盆に返らず
「覆水盆に返らず」という言葉があるが、示談は撤回云々の前に、そもそも本当に示談でいいのかという判断が重要だ。つまり撤回の可能性が残されているなら、示談の検討はかなり慎重にならなければならない。
知事が失った信頼は、知事にとって想定外だっただろう。軽い気持ちの発言だった可能性は非常に高く、石川県のことを思っての発言だったということは容易に想像できる。しかし示談の撤回が難しいように、世の中には一度失ってしまうと、取り戻すのに非常に面倒な事が沢山あるのも事実だ。示談の撤回の話から少々大きくなりすぎたかもしれないが、こんなご時勢だからこそ、何事も後悔がないように行動したいものだ。
●専門家プロフィール:弁護士 井上義之 事務所HP ブログ
依頼者の置かれている状況は様々です。詳しい事情・希望を伺った上で、個別具体的事情に応じたきめ細やかなサービスを提供することをモットーに業務遂行しております。お気軽にご相談ください。
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