■忘れてはいけない「感謝」と「思いやり」
テレワークが原因と思えるトラブルでも、解決のポイントは根本となる「夫婦関係」にあるという。
「お互いに心地よく暮らしていく上で大切なポイントは、『感謝』、『思いやり』、『我慢せずに相談する』の3つです。『そんなの分かってる』と思うかもしれませんが、これらを実践するのは簡単ではないですよね。特に『感謝』と『思いやり』は意図してもてるものではなく、自然と湧き上がってくるものです」(真中さん)
それらの気持ちが湧きづらくなってしまうのは、相手の思いや行動を知らないことが理由だとか。
「思いやりの気持ちを抱くのに大切なのは、『相手の仕事に関する話を聞くこと』です。具体的な仕事の内容は理解できないかもしれませんが、相手が普段、1日の大半を過ごす仕事や職場でのことを“興味をもって知ろうとする”という姿勢が大切なのです」(真中さん)
相手の仕事への思いや状況を知ることで、本人の苦労も想像できそうだ。
「パートナーの仕事への思いについて知ることで、相手への感謝や思いやりの気持ちが自然と湧いてくるはずです。テレワーク中に生まれる要望にも、“協力してあげたい”と思いやすくなるのではないでしょうか。さらに“理解しよう”という姿勢を示すことで、相手は“応援してもらえている”と心強さを感じられるでしょう」(真中さん)
互いに歩み寄り、協力関係を築くことがテレワークにも不可欠だ。
■ストレスの理由を考えてみる
相手に理解を示すことはもちろん大事だが、一方で「我慢せずに相談する」ことも欠かせない要素だ。
「いくらパートナーの事情を理解したとしても、ストレスを感じてしまうこともあります。その状態を無視して我慢をしてしまうと、いつか不満となって爆発しかねません」(真中さん)
そんなときはまず「ストレスの理由を考えるとよい」と真中さん。
「『毎日3食ご飯を作るのが嫌』かもしれません。あるいは『リラックスできないのが嫌』ということもあるでしょう。彼が横で仕事をしていると、自分もちゃんとしなければいけないように感じて、それがストレスになるということもありえます」(真中さん)
まずは困っている原因を理解することが先決だ。次に解消、もしくは軽減する手段はないか考えてみよう。
「自分でできることから工夫してみるとよいです。対処法が見つけられない場合はひとりで抱えずに、『困っているから一緒に考えて欲しい』と相談してみましょう。完璧な解決策は見つからないかもしれません。しかし『自分だけが一方的に我慢している』という気持ちをもたずに済むことで、精神的に楽になるのではないでしょうか」(真中さん)
快適なテレワーク生活を送る上でベストな方法は、「個別の部屋を確保すること」だという。しかし物理的に難しい家庭も多いだろう。
「その場合、ひとりで出かける時間を定期的に設けてみましょう。小さなお子さんがいる場合は自分のことは後回しになりがちですが、意識的にパートナーに相談してみてください。『息が詰まって辛くなってしまいそうなので、少しでもよいから自由時間が欲しい』など、素直に伝えてみましょう。自由時間を満喫した後は、お互いに感謝を伝えることも忘れずにしてくださいね」(真中さん)
「感謝」と「思いやり」、「我慢せずに相談する」を徹底することで、テレワークの問題だけでなく夫婦間のさまざまな困難を乗り越えられるようになるという。生活様式の変化はお互いへの理解を深めるチャンスと考え、ポジティブに向き合ってみるとよいだろう。
●専門家プロフィール:真中美和
恋愛・夫婦関係専門のパートナーシップカウンセラー。自身の経験を活かしたカウンセリングが得意で、年間、延べ720人以上のパートナーシップの相談に乗る。
画像提供:ピクスタ