
■栃木のイモ入り焼きそば、大分のとり天……
まず飲食店などで食べられる、地域ならではの食べ物を教えていただこう。
「栃木県栃木市のイモ入り焼きそば、大分県大分市のとり天、埼玉県行田市のフライやゼリーフライなどが有名です。それぞれについて簡単に説明すると、ジャガイモ入り焼きそばは、一口大に切ったゆでたジャガイモかジャガイモフライを焼きそばと一緒に炒めたもの、とり天は鶏肉に衣をつけて揚げたもの、フライは水で溶いた小麦粉を鉄板の上で薄く焼いたもの、ゼリーフライはおからを主としたものに衣をつけずに素揚げしたものです。ちなみに、ゼリーフライはゼリーを油で揚げてあるかと思いきや、大判小判の昔の『銭』の形をしているので、『ぜにふらい』が『ゼリーフライ』となったそうです」(田中さん)
埼玉出身の筆者は行田のフライとゼリーフライは食べたことがある。
「いずれも、その地域では市民に親しまれています。例えばイモ入り焼きそばは、栃木県はもとより、群馬県でも当たり前で、わざわざ『イモ入り』などとうたわずに、イモは普通に焼きそばの具として入っています」(田中さん)
ご当地食品はバラエティ豊かだが、B級グルメと呼ばれるものは、「全国区と思っていたけれど……」というものが多いそうだ。
■福井の豆入り番茶、栃木のレモン牛乳……
では、飲み物はどうだろうか?
「沖縄県の琉球もろみ酢やさんぴん茶、福井県の豆入り番茶、栃木県のレモン牛乳などがあります。琉球もろみ酢とは、琉球泡盛蒸留後のもろみを絞ってろ過した清涼飲料水、さんぴん茶とはジャスミン茶の一種、豆入り番茶は炒った大豆を加えた番茶、レモン牛乳は砂糖や香料などを加えた牛乳です」(田中さん)
飲み物にもいろいろあるものだ。では、スイーツは?
「広島県呉市のフライケーキが有名です。これはカリッとした食感が自慢の揚げまんじゅうです。あとは、風習に近くなりますが、福井県ではお正月にはこたつに入って水ようかんを食べるというスタイルが定着しています。この水ようかんは、1センチくらいの薄い板状で、B5サイズくらいの大きさのものが14分割に切ってあります。それを薄いヘラのようなものですくって食べるのです」(田中さん)
田中さんは福井の生まれとのことで、「水ようかんを夏に食べる人は福井県人にはほとんどいません。私も含めて福井県人には水ようかんは冬のものとDNAにしっかりと刻み込まれています」という。
ほかにも、最近では都内でもよく見かける沖縄県のサーターアンダギーなどもあり、これらはネット通販やアンテナショップでも入手できる。
■名古屋めしは名古屋発祥ではない!?
それにしても、全国区と思っている人が多いけれど、実はローカルモノにはいろいろあるものだ。
「おもしろい話として、今や全国区となった『名古屋めし』は、実は名古屋発祥ではないものが多いのです。味噌カツや天むすは三重県が発祥の地といわれています」(田中さん)
新幹線の名古屋駅で天むすをお土産に買って、地元に帰るのが楽しみという人もいるだろう。
「そもそも名古屋めしは、名古屋発祥がコンセプトではないので、当たり前といえば当たり前なのですが、それを知らずに名古屋がルーツだと思っている人が多いのです」(田中さん)
ちなみに筆者の地元・埼玉県川越市には麺が普通のものより極太かつ短い、川越太麺焼きそばがある。実はは高校生になるまで、焼きそばといえばこれだと思っていた。なかなかの美味なので、皆さんも川越に来た際には、ぜひ食べてほしい。
●専門家プロフィール:株式会社ブランド総合研究所
地域ブランド等の戦略立案、調査、PR、商品開発などに取り組んでいるほか、代表、田中章雄氏は地域ブランドアドバイザーや、地域ブランドコンサルタントなどとしても活躍中。2008年4月に地域ブランドおよび地域団体商標の普及・啓蒙活動が認められて特許庁「知財功労賞経済産業大臣表彰」を受賞。