![菩提寺の「納骨させないぞ」は法的に有効かどうか弁護士に聞いてみた](http://oshiete.xgoo.jp/_/bucket/oshietegoo/images/watchmain/a/542301348_5dcce8ac5348f/ORG.jpg)
■そもそも菩提寺が納骨を拒否することは許されるのか?
「墓地、埋葬等に関する法律の13条は『墓地、納骨堂または火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵または火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない』と規定しています。墓地の管理者は『正当の理由』がない限り納骨等を拒否できないものとされています」(井上義之弁護士)
正当な理由があれば納骨の拒否は認められるという。
■納骨拒否が認められる正当な理由1:物理的に余地がない、墓地管理に支障をきたす
「スペースの都合など、墓地の管理上やむを得ない場合は『正当の理由』となり得ると解されます。例えば、神戸地裁平成5年7月19日判決では、墓埋法13条の『趣旨に照し社会通念により判断すべきであるが、具体的には新たな埋葬等を行う余地がないこと、申込者が墓地等の正当な管理に支障を及ぼすおそれがあること等の場合』に正当の理由があると判断されています」(井上義之弁護士)
そもそも物理的に納骨のスペースがない場合は、納骨の拒否は認められるとのこと。また墓地の管理に支障をきたす場合も拒否が認められる。これらは仕方がないだろう。
■納骨拒否が認められる正当な理由2:宗教上の理由
「津地裁昭和38年6月21日判決では、寺院墓地に先祖の墳墓を所有する者からの埋葬蔵の依頼がある場合に、管理者はその者が改宗離檀したことを理由としては原則としてこれを拒むことができないとしつつも、異宗の典礼の施行を条件とする依頼あるいは無典礼で埋葬蔵を行うことを条件とする依頼に対しては自派の典礼施行の権利が害されることをもって埋葬等を拒否する正当の理由にあたる旨判断しています。ちなみに仙台高裁平成7年11月27日判決でも同義の判断が出ています」(井上義之弁護士)
既にその寺院にお墓がある場合、改宗や離檀をしていたとしても納骨拒否はできないという。ただし法事法要等を改宗後の典礼にのっとったり、あるいは無典礼という条件付きの納骨の依頼であった場合は納骨拒否の正当な理由になるという。
■高額なお布施を要求され、それを支払わせるために「納骨させないぞ」と言われた場合
「菩提寺から合理的な理由なく極めて高額なお布施を要求されても、檀家は慣習上定まった額を超えるお布施を支払う法的義務はないと思います。そして支払いを事実上強制するために『納骨させないぞ』と言ってくるようなケースについては、民事上は不法行為、刑事上は恐喝等にあたる可能性もあり得るでしょう」(井上義之弁護士)
払う必要はない上に、そもそも発言自体に違法性があるとのこと。ではこのような事態にはどう対応すればいいのだろうか。
「2つの方向性が考えられます。1つは、檀家契約の継続を前提として、菩提寺側と話し合いをし、解決を目指す方向性です。裁判手続きを利用することも可能ですが、長年の付き合いのある菩提寺と正面から対立するのは弊害もあり、まずは当事者同士でまたは代理人弁護士に依頼して十分な協議を尽くすべきでしょう。葬儀や埋葬を巡る法律問題は影響が末代まで及ぶ事柄であり、かつ、専門的な内容を含みますので、専門家に任せるのが安心かと思います。
もう1つは、従前の菩提寺との関係を絶つ(離檀する)方向性です」(井上義之弁護士)
離檀しないならば話し合いで解決するしかないとのこと。最後に離檀を選択した場合の興味深いある一つの可能性について触れてくれた。
「寺に対して支払済みの永代供養料や納骨檀使用申込金等の返還を求める余地があります(東京地裁平成26年5月27日判決)。また、お寺から離檀料を請求された場合、特に争わずに言われた額を支払うのも1つの考え方ですが、離檀料の法的性質(強制的に実現できる権利か否か)や消費者契約法の観点から争う余地もあるでしょう」
諸々の返還請求が認められる可能性があるという。また離檀料についても支払うべきかどうかしっかり検討したほうがよいとのこと。
■まとめ
納骨の拒否が認められるケースは2つ。1つ目はそもそも納骨可能なスペースがない場合や墓地管理に支障をきたす場合。2つ目は、既にお寺にお墓がある場合、お寺の宗旨宗派とは異なる形式や無宗教での納骨を希望する場合だ。
もしもお寺から高額なお布施を要求され「払わないなら納骨させないぞ」と言われた場合は、払う必要はない。そして離檀する場合は諸費用の返還請求が認められる可能性があるとのこと。
トラブルはないに越したことはないが、もしもあった場合、何かの参考になれば幸いだ。
専門家プロフィール:弁護士 井上義之 事務所HP ブログ
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