■生まれ順による性格の違い
同じ環境で生まれ育っても、生まれ順で性格は違うものなのだろうか。一般的な傾向について聞いてみた。
「最初に誕生した子を長子(ちょうし)といいますが、親にとっても初めての子育てということもあり慎重に手をかけて育てられる傾向にあります。そのため、長子も慎重で真面目な性格に育つことが多いです。弟妹が生まれると、面倒を見たりお手伝いをしたりと親に頼られる存在となるため、責任感も強くなります」(田宮さん)
中間子はどうか。バランサーのイメージがあるが……。
「兄姉、そして弟妹の間に挟まれる中間子は、常に周りの様子を見て行動することが多いでしょう。場の空気を読み協調性が高いのが特徴です」(田宮さん)
次は、末っ子の特徴だ。
「きょうだいの中で最も年齢が低い末っ子は、何歳になっても親が世話を焼いてしまいがちですね。兄姉に手を貸してもらうことも多く、甘え上手で物事を楽観的に捉える面が見られます」(田宮さん)
では、一人っ子はどうだろう。マイペースといわれるが、本当だろうか。
「一人っ子は自分の意思を貫くところもありますが、やはりマイペースな面があるでしょう。家庭内では何事も一人で取り組むことが多いため、最後まで一人でやり抜く力が育まれる傾向もあります」(田宮さん)
とはいえ、「子どもの性格は様々な背景や条件が絡み合い形成されます」と田宮さん。異性のきょうだいか同性のきょうだいかでも、性格の傾向は異なるという。あくまでも一般的な性格の傾向と捉えて欲しいとのことだ。
■生まれ順による性格の違いを踏まえての子育て
生まれ順による性格の違いを踏まえ、どのような点に注意して子育てをするとよいだろう。
「親の愛情を一身に受けて育つ長子は、弟妹が生まれると自分は見放されたような気持ちになることがあります。『お兄ちゃん(お姉ちゃん)なのだから』と我慢を強いられることに葛藤を抱きながらも、親の助けになろうとすることが多いです。あまりそのような言葉は使わずに、ときには思い切り甘えさせてあげましょう。お手伝いをしてくれたときは、しっかり褒めてあげてくださいね」(田宮さん)
中間子は、親の目が行き届きにくいそう。
「特に同性が続いた中間子は、親からの注目度が低く寂しさを感じることがあるでしょう。注目を浴びようと親を困らせたり、気を引く行動をすることがあります。そんなときは『僕(私)のことも構って』というサインだと捉え、中間子の話に集中する時間を作ってあげて欲しいです」(田宮さん)
末っ子は、つい子ども扱いしてしまいがちだが……。
「いつも兄姉の言動を見ているので、要領がよく甘え上手なのが末っ子です。しかし、いつまでも子ども扱いされることにストレスを感じる場合があります。チャレンジ精神旺盛なので危なっかしく感じるかもしれませんが、親は少し離れて見守る気持ちを持ちましょう」(田宮さん)
自己中心的と思われがちな一人っ子はどうか。
「親との関係性が濃く親孝行の子が多いといわれます。人を頼らず成し遂げる力もありますが、身近な人間関係の中で意見が分かれた場合の対応力を培える機会が少ないです。できるだけ同年代の友達と遊ばせるとよいですよ」(田宮さん)
最後に田宮さんは、子育てにおいて最も大切なことを伝えてくれた。
「きょうだいでは『お姉ちゃんは言うことを聞くのに』、『弟は成績がよいのに』など、出来のよい子を基準に比較しがちです。比較された側の子は、親に愛されていないと心が傷ついたり、ときには反発することがあるかもしれません。何番目に生まれても安心して暮らせ、“失敗や挫折をしたときは親元へ帰れば心が癒される”という環境作りを心掛けましょう。そうすれば子ども達は自分らしく、社会に大きく羽ばたいていくでしょう」(田宮さん)
一般的な傾向とはいえ、生まれ順による性格の違いは興味深い。自分自身を振り返ってみて、あてはまることがあったという人もいるのではないだろうか。知っておくことで、子育てだけでなく、家族やきょうだい、友人、同僚とのコミュニケーションの補助になれば幸いだ。
●専門家プロフィール:田宮 由美
家庭教育協会「子育ち親育ち」代表。オールアバウト子育てガイド。幼稚園・小学校教諭、保育士資格保有。幼稚園、小学校での勤務、幼児教室の展開、小児病棟への慰問など多方面から多くの親子に関わる。現在は「心の根っこ(自己肯定感)を育む子育て」を提唱し、メディア執筆や講演、研修、テレビ、ラジオなどで活動中。HP「子育ち親育ち」、書籍「比べない子育て」1万年堂出版などがある。
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