
一昔前、埋葬といえばお墓しかなかった。しかし、現在は樹木葬や海洋散骨、手元供養、合同墓、納骨堂など種類はさまざまで、今後もそれらが広がっていくことを考えると、お墓とお墓参りは縁遠いものとなる可能性は高い。「教えて!goo」でも「お墓参りのマナー」の正誤に不安があるという方から質問が寄せられている。
■お墓参りの基本は五供
お墓参りが縁遠くなればなるほど、当然お墓参りのマナーも忘れられてしまう。そこで今回はお墓参りのマナーについて、心に残る家族葬というサービスを通して、日本全国で葬儀を執り行っているという葬儀の専門家、葬儀アドバイザーに話を聞いてきた。
「お墓参りのマナーに五つのお供え『五供(ごく)』という考え方が古くから伝わっています。具体的には『香、花、灯燭、浄水、飲食』を指しています。『香』はお線香で、『花』は文字通りお花です。『灯燭』は焼香のための火ではなく、蝋燭に火を灯すこと自体を意味しています。『浄水』は墓石にかける水ではなく、故人の飲み物です。『飲食』は故人に召し上がっていただく食べ物です。持ち物は以下の通りです』(葬儀アドバイザー)
【お墓参りに必要なもの】
・お花
・お数珠
・お線香
・ロウソク
・マッチかライター
・お供え物(食べ物など)
【お墓のお掃除に必要なもの】
・手ぬぐいや軍手
・雑巾
・スポンジ
・歯ブラシ
・ゴミ袋
全てを持参する必要は必ずしもないだろうが、手を抜くことなくお墓参りをする場合はどれも必要と言えるのだろう。
■お墓やお墓参りのうんちく
続いて、お墓やお墓参りに関連するうんちくについて教えてもらった。
「非常に強い毒性を持つことから『悪しき実』という語源を持つシキミですが、墓地に多く植えられている理由は、亡骸を野生動物から守るためだったとされています」(葬儀アドバイザー)
「墓地や霊園で食べ物のお供え物を禁止したり、持ち帰ることが規則となっているのは、動物がそれを食い散らかしたり、畑が荒らされることを回避したり、人間社会を守るためだけではありません。実は動物がお供え物に依存すると、動物の生態系にも悪影響となります。つまり動物を守るためなんです」(葬儀アドバイザー)
「古い墓地が希少な植物を保全しているという説があります。なぜなら墓地であるが故に、開発対象から除外されてきたというのが理由です。また墓地の管理は手作業が一般的で、強いダメージを与える草刈り機などが使われてこなかったことも大きな理由だとされています」(葬儀アドバイザー)
個人的には古い墓地が植物の保全に一役買っているというのは驚きだった。
■お墓参りの意外な役割
正直に告白すると、筆者はこれまでお墓参りにほとんど行ったことがなかった。というか、そもそも行こうとも思わなかった。しかし結婚して、子供が生まれて、急にお墓参りに行く機会が増えた。これは、突然先祖を大事にしようという考えが生まれたわけではない。単純に、子供にご先祖様の存在や、そのありがたさをわかってもらおうというのが目的だった。ところが、子供にお墓参りの意味を教えているうちに、筆者自身がお墓参りの重要性を知ることになった。
将来、子供が大きくなると、子供は遊びに夢中でお墓参りどころではなくなるかもしれない。しかし、もしも子供がさらに大きくなって、私と同じように家庭をもち、自分の子供に自分自身のルーツや、今存在していることの意味を伝えるならば、きっとお墓参りは重要な役割を果たすはずだ。
お墓参りを礼賛したいわけではないが、お墓参りに行くとどんな気持ちになるかを少しでも共有できたら幸いである。
●専門家プロフィール:心に残る家族葬 葬儀アドバイザー家族葬こそが、故人との最後の時間を大切に過ごしたいという方に向いていると考え、従来の葬儀とは一線を画した、追加費用のかからない格安な家族葬を14万3000円から全国で執り行っている。
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