
迷信の殆どは科学的な根拠を持ち合わせていない。しかし日常生活にどっぷりと溶け込んでおり、守るのが当然とされている。破ろうものなら軽蔑されることすらある。「教えて!goo」に「朝か昼に爪を切る?(夜爪を切ると親の死に目に会えない)」という投稿があるが、質問者は「夜に爪を切るのがそんなに非常識ですか?」と問題提起をしている。そこで今回は心に残る家族葬という葬儀サービスを全国で展開している葬儀アドバイザーに、葬送儀礼にまつわる迷信を聞いてきた。
■葬送儀礼にやたらと多い迷信
【ご飯に箸を突き刺す】
「ご飯にお箸を突き刺すのは死者の枕元に供える枕飯を連想させるので縁起が悪いと言われています」(葬儀アドバイザー)
【夜干し・北干し】
「死者に使用した着物や布団は、夜に北向きに干していたそうで、夜干し・北干しは縁起が悪いとされています」(葬儀アドバイザー)
【逆さ水】
「ぬるま湯は熱湯に水を入れるのが良いとされています。水に熱湯を入れたぬるま湯は遺体を清める湯灌に使用するので禁忌と言われています」(葬儀アドバイザー)
【妊婦の葬儀参列】
「お腹の中の子をあの世に連れて行くという理由で縁起が悪いとされています。お腹に鏡を入れれば、悪霊を跳ね返すので大丈夫というのもこれに関連する迷信です」(葬儀アドバイザー)
これらに科学的な根拠は一切ない。ちなみに「北枕」や「友引の葬儀」、「左前の着物」、「箸渡し」、「香典に新札NG」、「火葬場の行き帰りのルート」、「出棺時に棺をまわす」、「出棺時に茶碗を割る」、「霊柩車で親指を隠す」など、その他にも沢山紹介してもらったが、文字数の関係で割愛した。
■葬送儀礼に迷信が多い理由
どうして葬送儀礼に迷信が多いのだろうか。
「『死んでいるかどうかの判定が不確実だった時代にどんなことが起こったか』でもお話しましたが、科学や医学が未発達の時代は、死は得体のしれない何かのせいであり、穢れだと信じられていました。それらを取り除くために、あるいは距離を置くためにこれらの迷信が生まれたと考えられています」(葬儀アドバイザー)
なるほど。心の安定をはかるために迷信は必要だったのかもしれない。
■迷信は非科学的で有害なのか
「迷信」を辞書で引くと「誤って信じること。現在の科学的見地から見て不合理であると考えられる言伝えや対象物を信じ、時代の人心に有害になる信仰」と書かれている。科学を信じ切っている現代人にとって、不合理で有害とされる迷信は馴染まない。
しかし私達は愛する人が病にかかれば神仏に祈りを捧げる。
迷信に良し悪しはない。根拠もない。しかし自分にとって都合のよい迷信であれば信じる、あるいは信じたいという人がいる以上、どんなに科学が発展したとしてもこの先も残り続けていくだろう。
「知識は力なり」の名言で有名な哲学者のフランシス・ベーコンは「すべての迷信は、占星術であれ、正夢であれ、予知体験であれ、天罰であれ、 当たらないことのほうがずっと多いにもかかわらず、当たらなかった時は見過ごしてしまい、当たった時は大騒ぎをするというだけのことである」と話したというが、つまり信じるか信じないかは自分次第ということなのかもしれない。
●専門家プロフィール:心に残る家族葬 葬儀アドバイザー
火葬料も含まれた追加費用のかからない格安な家族葬を税込み14万3000円から全国で執り行っている。24時間365日受け付けており、寺院の手配や葬儀後の各種手続きなどのアフタフォローにも対応。
記事提供:ライター o4o7/株式会社MeLMAX
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