■注射の痛みは「物理的刺激」と「薬の化学的刺激」で生じる!
注射と一口に言っても、大きく分けて皮内注射、皮下注射、静脈内注射、筋肉注射の4種類があり、針を刺す場所によって名前が違う。皮内注射はアレルギー検査、静脈内注射は点滴などで使われることが多い。そして、皮下注射と筋肉注射は、主に予防接種で用いられる。
「注射は、針が刺さるという物理的な刺激と、薬の化学的刺激(pHや浸透圧)によって痛みを感じます」
と、信州大学医学部附属病院第1内科の牛木先生。pHとは、その物質が酸性かアルカリ性かをしめす基準値のことで、浸透圧とは、濃度の違いにより生じる圧力のこと。薬物と血液とのpHや浸透圧の差が小さいほど刺激が弱く、大きいほど痛みを感じやすいのだという。
「一般的に、皮下組織に薬物を注入する皮下注射の方が、筋肉に薬物を注入する筋肉注射より痛いです。ただし筋肉注射の方が薬の吸収が早く、化学的刺激の強い薬剤でも投与可能です。したがって、薬の違いにより筋肉注射で痛みを強く感じる可能性はあります」(牛木先生)
「筋肉注射は痛い」というイメージを持つ人も多いが、それは薬剤の浸透するスピードと薬剤の強さが原因のようだ。
■注射の痛みを和らげる方法はある?
では、痛みを緩和する方法はないのだろうか?
「精神的緊張により痛みを強く感じてしまう可能性があるのでリラックスして予防接種を受けましょう。注射する部位を冷やしておくことや、親指などで強く押しておくと注射時の痛みを軽減できることがあります」(牛木先生)
これからインフルエンザの予防接種の季節になるが、インフルエンザワクチンは皮下注射。毎年痛みに苦しんでいる人はぜひこの記事に書かれていることを思い出し、痛さ対策の参考にして欲しい。
(酒井理恵)