![死者との結婚を意味する冥婚という習俗は未婚者の増加とともに廃れるだろう](http://oshiete.xgoo.jp/_/bucket/oshietegoo/images/watchmain/8/542491281_61f0f44649735/ORG.gif)
ちなみに冥婚は主に若くして亡くなった独身者のために、「あの世で結婚してほしい」という願いを込めて行われる。つまり結婚は、それほど「良いものである」という考え方が前提にある。「教えて!goo」にも「結婚できなかった不幸」というタイトルで質問が寄せられているが、結婚できたかどうかが幸せ不幸せの物差しとして図られることはしばしばある。
■日本に残る冥婚
そこで今回は葬送儀礼の習俗に詳しい心に残る家族葬という葬儀サービスを日本全国で展開している葬儀アドバイザーに、冥婚について話を聞いてきた。
「山形県の一部の地域では結婚することなく亡くなった者のために、あの世での幸せを願って、絵馬にあの世での結婚式を描いて奉納するむさかり絵馬という風習が残っています」(葬儀アドバイザー)
山形県天童市の鈴立山 若松寺では1300体ものむさかり絵馬が安置されているという。ちなみに沖縄では冥婚のことを「グソーヌニービチ(後生の結婚)」と呼んでいるそうだ。他にも青森県の一部でも冥婚の習俗が残っているという。
■台湾に残る冥婚
日本以外では台湾にも冥婚の習俗が残っているという。
「台湾では亡くなった方の写真や体毛を赤い封筒に入れて、道に落とし、その封筒を異性が拾った場合、冥婚に同意したとみなされるそうです」(葬儀アドバイザー)
本当かどうかはわからないが、台湾の冥婚は成立すると死者の家族から親族付き合いを求められることもあるとか。
■中国の冥婚は死者同士であるがゆえに度々問題となる
「中国では死者と生者ではなく、死者同士の結婚を冥婚と呼んでおり、それゆえに度々問題になっています」(葬儀アドバイザー)
死者同士の結婚であることがなぜ問題なんだろうか。
「冥婚相手として迎えるためには、相手の遺骨や遺灰が必要なんですが、それらが高値で取引されたり、あるいは盗掘されたりしているということで犯罪事件としてニュースになっています」(葬儀アドバイザー)
遺骨や遺灰の取引価格はその方の生前の容姿や年齢、死因、家柄などによって変わるらしくビジネス化しているそうだ。
「中国では未婚のまま子どもが亡くなると一族の繁栄が途絶えると信じられているそうです。また今はありませんが、一人っ子政策の影響もあって、一人しかいない大事な我が子の死は、喪失感以外にも様々な問題を引き起こしていると言えます」(葬儀アドバイザー)
■結婚することが果たして幸せなのかどうか
冥婚は生前に結婚できなかったことが残念であるということで成立している習俗である。しかし2021年の結婚平均年齢は男性31歳、女性29.4歳(厚労省の人口動態調査)となっており晩婚化は止まらない。ある調査によると、40歳を過ぎた未婚の方は、それ以後結婚する可能性は非常に低いという。つまり、少子高齢化と相まって未婚者がこの先増える可能性は高いと言わざるを得ない。
一昔前の皆婚社会に比べて、現代では結婚の価値基準が揺らいでいることは否めない。ただそれでも結婚することが幸せだと思っている方は一定数いる。しかしこのまま未婚者が増えれば増えるほど、未婚が当たり前になり、冥婚という習俗もなくなっていくだろう。ただ未婚が当たり前となった世の中が良いかどうかはわからないが。
専門家プロフィール:心に残る家族葬 葬儀アドバイザー
火葬料も含まれた追加費用のかからない格安な家族葬を税込み14万3000円から全国で執り行っている。24時間365日受け付けており、寺院の手配や葬儀後の各種手続きなどのアフタフォローにも対応。
記事提供:ライター o4o7/株式会社MeLMAX
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