
そこで、株式会社ワーク・ライフバランスの松久晃士さんに、多くのテレワーカーが抱える問題や対処法を伺いつつ、上手にテレワークを行う工夫について話を聞いてみた。
■テレワーカーが抱える問題とその対処法
多くのテレワーカーに、どのような問題が生じているのか。対処法と併せて教えてもらった。
「テレワークでは、『上司や同僚の状況が見えず、疎外感や不信感を抱いている』、『オンライン会議や打ち合わせ、商談がやりにくい』、『子どもがいて仕事に集中できない』などの声が聞かれます。最初の問題は、メンバーの姿が見えず状況が読めないことが原因ですので、『始業、終業時などにチャットやオンラインで打ち合わせをする』、『スケジューラーなどで細かな業務予定まで共有する』、『メンバー同士のちょっとした会話にも使えるオンライン会議室を設ける』ことで、互いの状況を把握しましょう」(松久さん)
オンライン会議に、やりにくさを感じている人はどうすべきか。
「オンライン会議では、『話していない人はマイクをミュートにする』、『反応を大きく示す(うなずく、OKサインを送る、質問する、感想を述べるなど)』といった配慮が有効です。対面でも『時間通りに入室する』、『議論は(オンライン上の)ホワイトボードなどに記入し可視化する』、『相手の意見に傾聴する(一方的な話をしない)』、『結論をまとめ、議論を振り返る』ことには、これまで以上に留意し、互いの信頼関係や集中力が低下しないようつとめます」(松久さん)
どのような状況でもメンバー同士が配慮しあうことは、ビジネスマナーの鉄則だろう。
「『子どもがいて仕事が手につかない』という問題では、『PCに向かうことが大変』、『子どもの声で会議に集中できない(相手も集中しづらい)』、『子どもを放置して仕事することに罪悪感がある』などの意見が多いです。今まさに社会全体で発生している問題ですので、メンバー同士、家庭状況を理解しあえるとよいですね」(松久さん)
自分の置かれている状況をオープンにし、子どものいるメンバー同士で工夫や知恵、アイデアを出し合い、協力しあうことも有効だそうだ。
■上手にテレワークを行う工夫
無難にテレワークを行うため、「家族との関わり方」や「生活面」において、できる工夫はあるか。
「家族との関わり方では、一日の予定を家族全員で立てるとよいです。始業時間やオンライン会議の時間、外せない予定などを共有し、子どもたちとは休憩や勉強、食事の時間などの計画を立てましょう。また、通勤時間がなくなるのはテレワーク最大のメリット。お子さんと散歩に行くなど、時間を有効に使いたいですね」(松久さん)
生活面で求められるのは、テレワークにて直面した弊害への対応力のようだ。
「テレワークの弊害としてあげられる『運動不足』は、通勤やジムに依存し、運動習慣がなかったということです。そして『夫婦間がぎくしゃくする』のは、これまで日中を別々に過ごすことで、何とかなっていただけです。当たり前にあった『働く場所』が変化し露呈した問題に、状況に応じた適切な対応が必要です。『自宅では集中できない』、『疲れやすい』という人は、テレワークの負担を軽減するクッションや、耳が疲れないワイヤレスのマイクやスピーカーなどの快適グッズを取り入れてみるのもおすすめですよ」(松久さん)
今回のお話でテレワークのせいにしていた弊害は、「日常的に意識を向けてこなかった課題」と気付かされたという人もいるのでは。テレワークでも、捉え方や考え方、やり方などを変更、調整するだけで、これまでと同等の仕事ができるとわかった。ウイルスが終息しテレワークを終える日が来ても、当たり前のように元に戻るのではなく、この経験を仕事や家族との関わり方や生き方そのものについて考え直す好機にすべきだろう。
●専門家プロフィール:松久 晃士(まつひさ こうじ)
ワーク・ライフバランスコンサルタント。(財)生涯学習開発財団 認定コーチ。40社以上の働き方改革プロジェクトを支援し、1万名以上のビジネスパーソンにアドバイスを提供。静岡県三島市に移住し育児休業も経験。