■賛成派も必ずしも心からやりたいわけではない
本当はやめたいのに、言い出すと目をつけられそうなどと、「義理チョコ」はちょっと面倒くさい行事になっている職場も多いのでは?
「女性にはこの時期、『自分だけ参加しなくてもいいのか』、『習慣化されている行事から自分だけ逃げられるのか』などの、心の葛藤があるかもしれません。自分だけあげないと目立ってしまい、人間関係が難しくなることも心配でしょう。しかし賛成派も『心からやりたい』と思っている人ばかりじゃないです」(椎名さん)
必ずしも全員が楽しんでいるわけではないが、悪いことばかりでもないという。
「『義理チョコで、上司や社員が喜ぶならいい』と思って参加する人もいて、それが人間関係の潤滑油になることもあります。ですから、一概に意味がないとはいえないのです」(椎名さん)
反対派には無駄なことのように思える「義理チョコ」も、社内コミュニケーションに役立つこともあると椎名さんは指摘する。
■周囲に嫌われずに上手に断る方法
それでもやめたいと思ったとき、周囲に嫌われずに上手に断る方法はあるのだろうか。
「きちんとした理由があるかないかがポイントですね。忘年会や新年会の場合、『子どもがいて、夜は出歩けない』といった理由が、正当なものとみなされます。一次会だけは顔を出すという姿勢をみせれば、非難されることは少ないでしょう。それと同じで、たとえば『お返しする男性にも負担がかかる』とか、『年度末で忙しい時期にホワイトデーのお返しの用意は大変』など、相手の立場を考えて発言すれば納得してくれるのではないでしょうか」(椎名さん)
そのような意見を「周囲の声に惑わされず、凛とした態度で言うことが大事です」と椎名さんは教えてくれた。
「世の中には意見の違う人、気の合わない人がいるのは当たり前です。『自分はこういう理由で参加できません』と口に出せば、それに反対する人がいても不思議ではありません。自分の言い分だけ通して、『嫌われたくない』は難しいです。もし、参加しなくても何も言われない人がいるとしたら、普段の人間関係が上手くいっている、あるいは自分のカラーを作り上げているのでしょう」(椎名さん)
参加はしたくない、でも嫌われるのはもっと困るというのは、残念ながら虫のいい話になってしまうのだ。
■根付いてしまった習慣は上が動かないと変わらない
日本独特の「義理チョコ」という風習からは逃れることはできないのだろうか?
「たとえば、その日はみんなでスイーツを食べるといった新たな提案もいいかもしれないですね。根付いてしまった習慣を変えるには、ある程度の立場の人が動かなければ難しいです。いくら反対派が声をあげたとしても、会社のトップや部署の上司が言い出さない限り、完全に義理チョコ習慣がなくなることはないでしょう」(椎名さん)
そんな行事化してしまった「義理チョコ」もプラスに生かす方法があると椎名さんはいう。
「もしも義理チョコ担当になってしまったら、『誰よりも面白いチョコを探してみよう』『身体にいいチョコはどうだろう』と、ポジティブに参加してみてはいかがでしょう。『ユーモアがあるな』『気遣いできる人だ』と好印象を抱いてもらえるかもしれません」(椎名さん)
頭から否定しているだけでは何もはじまらない。義理チョコ担当を押し付けられた場合、人間関係をうまくやる機会として活かす方法も模索したいものだ。
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●専門家プロフィール:椎名あつ子
横浜心理ケアセンター代表 心理カウンセラー。2000年にカウンセリングルーム「横浜心理ケアセンター」を設立。 海外駐在でのさまざまな経験を活かしたファミリーカウンセリングや、企業向け講演や従業員支援プログラム(EAP)などを通して、各種医療機関や弁護士と協力体制のもと、多種多様な心の問題に対応。併設の「こども発達スクール」では、子どもの心の問題や気になる部分、伸ばしたい部分に沿った授業およびセラピーを行っている。著書に「ゆがんだ愛 それから」(ギャラクシーブックス)がある。