■怒りの元となる第一次感情に目を向けさせよう!
お話を伺ったのは、アンガーマネジメントの専門家である菅野昭子さん。子どもが怒りに任せて暴力を振るった場合、頭ごなしに叱ってしまう人は多いかもしれないが、まずは責めずに子どもの気持ちに寄り添うことが必要だ。
「怒りは第二次感情です。その根となる別の感情が存在します。例えば、『バカにされて悔しい』、『決めつけられて嫌』などです。『悔しかったんだね』など、共感してあげると、子どもも問題に向き合う気持ちが起きてきます。落ち着いたら、暴力以外の選択肢はなかったのか一緒に考えましょう」(菅野さん)
その上で、子どもが謝りたくない場合、怒りと暴力を切り離し、暴力の部分だけでも謝ることを親が提案するとよいそうだ。
■怒りのルールと対処法を伝えておくことが大切
子どもが安易に暴力に走らないようにするために、当たり前のようだが、決して親が暴力をふるってはいけない。
「子どもは親の真似をします。『暴力をふるってはいけない』を徹底して伝えましょう。伝えていれば暴力をふるったとき、違反とすることができます。日本アンガーマネジメント協会では、子どもたちに怒るときのルールを次のように伝えています。人を傷つけない、自分を傷つけない、ものを壊さない。大人も胸に刻みたいルールです」(菅野さん)
とはいえ、どうしても衝動的に暴力をふるいそうになることもあるだろう。そのときの対処法も子どもに伝えておくことが大切だ。
「暴力は後悔につながる反射的な怒りの表現です。怒りを感じても、まずは間をとります。目安は6秒。深呼吸する、数を数える、好きな歌を心の中で口ずさむ……6秒待つことでより冷静に怒りに対処できます」(菅野さん)
また、子どもが日頃からストレスをためないよう、リラックスできる時間、思いっきり身体を動かせる時間を設けてあげるようにしよう。
■親に必要な心構えとは?
最後に、親の気構えについて聞いてみた。
「暴力より、暴力をしなかったところに注目しましょう。子どもは親の注目を求めています。親の注目の方向次第で子どもの行動が変わってきます。また、責めるより、問題解決と明るい未来に向けてパワーを注ぎましょう。そして、一人で抱え込まないこと。話すと気持ちが軽くなります。発達に課題があるなど、専門家の知識が必要なこともあります」(菅野さん)
「子どもが暴力的」とはなかなか他人に話しづらいことではあるが、案外共感してもらえることも。一人で思いつめないことが大切だ。
「便利なものに囲まれ、世の中全般スピードアップする中、待てなくなっていませんか? それは子どもも同じです。意識してゆったりした時間を持ちましょう。テレビやゲームから距離をおき、親子でじっくり話しましょう。相互理解につながり、お子さんは安心感の中、自己肯定感が上がります。その先にお子さんも、暴力という選択肢がなくなる日が来るかもしれません」(菅野さん)
暴力の元となっている感情は必ず存在する。焦らず、ゆっくり親子で向き合う時間を作ってみてはどうだろうか。
●専門家プロフィール:菅野 昭子
Ange Gardien代表。産業カウンセラー、心理相談員、日本アンガーマネジメント協会公認アンガーマネジメントファシリテーター。大人から子どもまで幅広い年齢層にアンガーマネジメントを伝えている。ユーモアを交えた講座は分かりやすいと定評あり。著書に『アンガーマネジメント怒りやすい子の育て方』(かんき出版)。
(酒井理恵)