■中学生によくある「身分の序列化」とは?
中学時代の経験は、その後の人生に影響するだろうか。
「もちろん影響を与えるでしょう。ですが、中学時代の立場や能力をずっと持ち続けるわけではありません。思考や行動を変えることで、後の人生は変わっていきます」(田宮さん)
中学時代の「立場や能力」により、それまでとは違う変化があるという。
「学校では、自然発生的に生徒間の序列が生じることがあります。そして、序列の近い生徒たちで形成される少集団が階層化し『スクールカースト』や『クラスカースト』が起こります。これらは中学時代に顕著に現れ、その後解消されることが多いようです。社会に出ても職場などで違った形のカーストが組まれる場合があります」(田宮さん)
階層化される生徒たちの特徴を聞いた。
「上位層は、自己主張し集団を盛り上げたりまとめるリーダーシップのある生徒が多いです。下位層は、それについていくような大人しく自己主張の控えめな生徒が多いです。いずれも団体が何かを行うときに必要です。気の合う友達がいる居心地のよいグループに入ればよいでしょう」(田宮さん)
現在所属している「層」を引きずりたくない場合は、人と比べる気持ちを手放し「自分は自分。ありのままでよい」と思考を変えるとよいそうだ。
■人間形成に役立つこと
立ち止まり、自分の行動を見直すことも大切だという。
「中学時代の勉強は世の中の理解を深め、受験や資格試験などの基礎になります。社会に出たときにも役立つため、真摯に取り組むことが求められます。部活動に打ち込むのもよいですが、自然に触れるのもおすすめです。植物や昆虫、雲の様子や天候、夜空や宇宙などに目を向け、感動したことや気になった現象、心ときめくものに出遭えるとよいですね」(田宮さん)
視野を広く持てるよう、さまざまな体験をするのもよい。学校生活などの日常を送りつつ、たまに違った目線を持つと新たな発見があるかもしれない。
「生活ではいつでも綺麗な水が水道から得られること、身体ではケガや病気をしたときに自然に治癒すること、社会では多くの場面でAIが役に立っていることなど、当たり前の日常に注視することも大切です。探求心をくすぐる面白いこと、不思議なことが見つかるかもしれません」(田宮さん)
人から言われてやることは、「やらされている感」が生じ、成果が上がりにくいこともある。自主的に打ち込める興味分野を見出すよう、時間を過ごしてみるとよいだろう。
■精神的成長に役立つリフレーミング
物事を別の視点で捉えるよう心がけることも、内面磨きに繋がるようだ。
「人間は『欠点』ばかりに目が行きがちなので、物事を見る枠組みを変え、ポジティブに解釈する『リフレーミング』という心理学の手法を習慣づけましょう。たとえば、自分のことを引っ込み思案だと思うなら、『温和で心優しく相手を尊重できる性格』と考えます。優柔不断なら『じっくり考えてから慎重に行動するタイプ』、頑固なら『人の意見に流されない強い信念があるタイプ』などと考えるようにすると、自分の性格を好きになれそうですね」(田宮さん)
他者に対しても長所を見つけ、よりよい関係を築けそうだ。
「新しいことに挑戦するときは、小さな達成感を積み重ねるとよいです。『◯◯することができた』など、小さな『よかったこと』、『嬉しかったこと』を文字にする習慣をつけると、徐々に自分に自信が持てるようになります」(田宮さん)
脳や身体の重要な成長期である中学時代には、それまでと違った経験をすることが多い。多感でもあるそんな時期だからこそ、幾度か機転を利かす必要があるともいえる。定期的に考え方を見直すことで、今できることに精一杯努力することができる。そうすることで自分が成長していることを感じることができ、理想とする未来へ近づくよいサイクルが生まれるのだろう。
●専門家プロフィール:田宮 由美
オールアバウト子育てガイド。幼稚園教諭・小学校教諭・保育士資格保有。幼稚園、小学校での勤務、幼児教室での指導、小児病棟への慰問ボランテイアなど多方面から多くの親子に関わる。現在は、「自己肯定感(心の根っこ)を育む子育て」をメディア執筆や講演、テレビ、ラジオなどで広めている。HP「子育ち親育ち」、書籍「比べない子育て」などがある。
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