■良質な仮眠を取るための体勢や条件
会社などで仮眠を取る場合の体勢は、「机にうつ伏せ」、「頬杖をつく」、「椅子に座り背もたれに寄りかかって腕組」、「座って壁に背を預ける」、「床に寝転がる」などが考えられる。どのような体勢だと高い仮眠効果を得られるのだろうか。
「良質な仮眠を得るためのポイントは、『頭と首を固定する』、『息が苦しくない』、『手足がリラックスできる』ことです。本当はリクライニングチェアーなどがよいですが、難しいでしょうから『電車で座って眠る姿勢』を意識するとよいでしょう。ただ、首と頭を固定しないとよく眠れないので、椅子を壁につけて座り、頭を壁につけ、必ずネックピローをして首を固定します。膝に大きめで横長のクッションを置いて両腕を乗せ、足元に台を置き、靴を脱いで足を乗せるとよいですよ」(橋爪さん)
電車内で居眠り中、首がコックリして目覚めることは誰もが経験済みだろう。それを避けるため、首と頭を固定するとよいそうだが、会社などでそのような体勢は周囲の目が気になるという声もあるに違いない。
「そのような場合は、机にうつ伏せ寝でもよいですが、うつ伏せ用の昼寝枕や足置台を使うとよいでしょう」(橋爪さん)
その程度なら人目を気にせずできそうだ。うつぶせ枕は低反発素材や折りたたみ式など、さまざまな形状ものが出回っているので、自分に合うものを探すとよいだろう。
■仮眠に適した時間
よく「15分ほどの仮眠がよい」という説を耳にするが、本当なのだろうか。
「本当です。15分というのは、眠りが深くならないうちに起きられる調度よい時間です。ぐっすり寝込んでしまうと、起きたとき頭痛がしたり、眠気が取れずだるいなどの症状が出て逆効果です。また15時以降の仮眠は、夜の本睡眠に支障が出てしまうので、仮眠は昼食後~15時までに取ることをおすすめします。15分の仮眠ではまだまだ寝足りないと感じるのが普通ですから、アラームをかけるとよいですよ」(橋爪さん)
ちなみに、中高年の方の仮眠は30分程度取ってもよいそうだ。すっきり起き、仮眠後のパフォーマンスを上げるためにできる工夫はあるだろうか。
「仮眠を取る前にコーヒーを飲むと、15分ほどで覚醒作用が効いてくるのでよいという説もあります。ですが、作用が出る時間には個人差があるため、アラームをかけて起きたら、屋外に出て外気を浴び、軽い体操をして眠気を払うのが一番効果的です」(橋爪さん)
■より良質な快眠を得るための工夫
ネックピローや昼寝枕以外でおすすめのグッズはあるだろうか。
「昼寝の場合は暗くする必要はないので、アイマスクではなく、アイピローで目の疲れを取るようにしたらいかがでしょう。使い捨て用も売られていますよ。可能なら、ラベンダーなどリラックス作用のあるアロマを利用したり、心地よい音楽を聴くのもよいですね」(橋爪さん)
橋爪さんご自身は、仮眠を推奨されるのかも聞いてみた。
「大いに推奨します。仮眠や昼寝を正しく取れば、以後のパフォーマンスが上がります。実際高齢者では、適切な昼寝を取っている人は疾病リスクが下がるという報告があるほどです。企業でも率先して仮眠用の椅子や仮眠タイムを設けたり、学校でもお昼寝タイムを作ることが理想です」(橋爪さん)
今回のお話を聞き、すぐにでも仮眠を習慣づけようと思った人は多いのではないだろうか。心身の健康と快眠後の仕事効率アップのため、自分なりの“心地よい仮眠スタイル”を極めたいものだ。
●専門家プロフィール:橋爪 あき
一般社団法人日本眠育普及協会代表・日本睡眠改善協議会認定インストラクター・日本睡眠学会正会員・睡眠健康推進機構登録講師・日本睡眠教育機構睡眠健康上級指導士などに従事。自らの睡眠障害から睡眠学を修得・克服した経験を活かし、講演やセミナー、睡眠相談、広報活動などを行う。