■専業主婦の妻は、無職でも自分の年金を払い続ける?
一般的に夫が会社員の場合は、厚生年金などに加入し国民年金保険料を納める「国民年金の第2号被保険者」であり、その妻が専業主婦の場合、妻は「第3号被保険者」となり、夫の厚生年金や共済組合から一括して年金を納めている。では夫が定年退職した場合、妻の年金はどうなるのだろうか。
「日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、将来、老齢基礎年金を受けるため国民年金に加入し、国民年金保険料を納める義務がありますが、夫が60歳もしくは65歳で定年退職した場合、夫の納付義務はなくなります。そのため、妻が60歳未満で無職の場合、『国民年金の第3号被保険者』から『第1号被保険者』になり、60歳まで払い続ける必要があります」(岡さん)
「国民年金の第1号被保険者」とは、20歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその家族、学生、無職の人などのこと。将来のため専業主婦の妻は、60歳まで国民年金保険料を捻出しなくてはならない。
■無職で収入がなくても夫婦で国民保険料を払い続ける?
定年退職した夫は、「国民年金の第1号被保険者」にも「第3号被保険者」にも該当しないので、国民年金保険料を納める義務はなくなるのだろうか。
「さきにも触れましたが、夫は60歳以降、国民年金保険料を納める必要はありません。しかし、『老齢基礎年金額を増やしたい』という人は、65歳まで国民年金保険料を納め続けることが可能な『任意加入被保険者』になることができます」(岡さん)
「任意加入被保険者」とは、64歳まで月々の定額保険料に付加保険料をプラスして納めると、65歳から支給される老齢基礎年金額に、付加保険料を上乗せできる仕組みだそうだ。では、夫婦ともに収入がなく、年金保険料を納めることが困難な場合は、どうしたらよいのだろうか。
「『国民年金保険料免除』や『国民年金保険料納付猶予制度』の申請を行うことができます。承認されれば、収入に応じて段階的に年金保険料が免除されたり、納付が猶予されます」(岡さん)
これらの手続きをせず年金保険料を納めなかった場合、未納期間分の老齢基礎年金が受け取れなくなってしまうが、もし手続きを行っていると、未納期間分の1/2の老齢基礎年金を受け取ることが可能だそうだ。
■夫婦揃って無職になるのに定年退職した翌年、夫は住民税を払い続ける?
地方自治体による教育や福祉、防災、ゴミ処理などを行うため、一定額以上の収入がある人に納付義務がある住民税。前年度の所得により納付金額が異なる住民税は、定年退職後、無職になっても払い続けなくてはならないのだろうか。
「住民税は前年度の所得によるため、定年退職した翌年も支払う必要があります。基本的に住民税には免除措置がなく必ず支払わなければなりませんが、どうしても困難な場合は、分割や納付の猶予を受けられることもありますので、市区町村の担当窓口に相談して下さい」(岡さん)
サラリーマンの場合、住民税は毎月の給与から天引きされているケースがほとんどだが、定年退職後は、自分で支払い手続きをしなくてはならない。前年度の収入が大きいと、必然的に負担も大きくなるので、定年退職前の人は留意しておいた方がよいだろう。
●専門家プロフィール:岡 佳伸
関東財務局長・関東経済産業局長認定経営革新等支援機関 社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表。特定社会保険労務士。2級キャリアコンサルティング技能士。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。(公財)東京都中小企業振興公社専門家派遣事業支援専門家。