
■親が部屋に入ることを嫌がる子、嫌がらない子の違い
親子の距離感は、子どもの年齢や成長とともに変化するのが一般的だという。
「親子の距離感は以下の順に変化します。
1)親子が一体化している乳児期
2)親が子どもの安全基地となり、何でも知っていてもらえると安心な幼児期~小学校低学年
3)自分の世界や秘密を持ち、親より友達との関係が大切になる小学校中~高学年
4)反抗期を経て精神的な親離れをはじめる思春期(中高生)
5)自立を獲得する青年期(10代後半以降)
子どもの性格や親子関係にもよりますが、一般的に思春期以降は自分のプライバシーを親に侵害されたくないと感じる子が多いです」(吉田さん)
10代後半になっても、自分の部屋に親が入ることを嫌がらない子もいるのだろうか。
「少数派ながらそのような子もいます。背景としては、思春期を終えて“大人同士”という意識を持った親子関係になっている、プライバシーを勝手に侵害しない信頼感がある、何らかの事情により親子の一体感が続いているなどが考えられます」(吉田さん)
もし自分の子どもが親を部屋に入れたがらなくても、過度に心配する必要はないようだ。
■年頃の子どもの部屋を親が掃除するのは過保護?
子ども部屋を掃除する親は過保護なのか。率直に聞いてみた。
「家庭によって『どんなに汚くても介入しない』、『子どもが自分で掃除できないなら親のサポートはやむを得ない』など、考え方は様々でしょう。後者の親が過保護ということはありません」(吉田さん)
注意しなければ掃除をしない子どもは、まだ自主的に掃除しようと考える力が備わっていないのかもしれない。
「親は子どもに無理な自立を強いるより、適切なサポートをする必要があります。掃除しないことが気になるなら、サポートの一環として親が掃除してもよいでしょう」(吉田さん)
「自立を促すためのサポート」と「過保護」は似て非なるものということだ。各家庭の方針に則り、部屋を清潔に保てるとよいだろう。
■子どもが自発的に掃除をするよう働きかける方法
そもそも、子どもが自発的に掃除できないのはなぜだろう。
「部屋の掃除ができない年頃の子どもは、『完璧主義の傾向があり、スイッチが入ると自分で掃除や片付けをするが続かない子』か『汚くても気にならない子』に分かれます」(吉田さん)
前者のタイプの子との向き合い方は?
「子どものスイッチが入ったときに親もサポートに入り、無理のない片付け方法を一緒に考えるなど、少しずつ掃除を日常化していくとよいでしょう」(吉田さん)
後者のタイプの子は叱っても意味がないそう。
「親が掃除をサポートし、『きれいな部屋は気持ちがよいと感じる体験』や『親が無償の愛情で掃除をしてくれていることを知る体験』をさせるとよいでしょう。親子関係が良好なら、子どもは親がしてくれたことに気づき、自立の必要性を感じたり、親に感謝する日が来ます」(吉田さん)
子どもが自発的に掃除できるような工夫も有効のようだ。
「面白い掃除グッズやおしゃれな片付けグッズを導入したり、同世代の子が上手に掃除や片付けをしている情報をSNSなどで見せたりすると、触発されることもありますよ」(吉田さん)
ただし、どのようなタイプの子にも「掃除をする意義を教えるべき」と吉田さん。
「大人になると、掃除や片付けはその人の生き方になります。自分の部屋をどのようにすれば快適か、どのくらいの物を所有したいか、何にお金や時間を使いたいかなど、掃除を通して親自身の考えや姿勢を子どもに伝えてみてください。子どもは親から学び、自分自身はどうしたいか考えはじめるでしょう」(吉田さん)
掃除は生き方を象徴する行動ともいえるのだ。自発的に掃除できる子にもそうでない子にも、改めて掃除の意義を伝えてみよう。自分なりのベストな掃除のカタチを見出し、よりよい生活を送るヒントになるかもしれない。
●専門家プロフィール:吉田美智子
臨床心理士。公認心理師。東京都スクールカウンセラー。東京・青山のカウンセリングルーム「はこにわサロン東京」主宰。自分らしく生きる、働く、子育てすることを応援中。オンラインや電話での相談にも対応している。
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