![アジサイ――花と思っていた器官は花ではない!?専門家に話を聞いた](http://oshiete.xgoo.jp/_/bucket/oshietegoo/images/watchmain/9/542301348_5b1f77d9def69/ORG.jpg)
■萼片(がくへん)が美しいからガクアジサイ
そもそもガクアジサイとは……? アジサイの一種と考えていいのだろうか?
「基本的にはそれが正解です。ただ、アジサイとガクアジサイの関係は、ちょっと複雑です。まず、知っておきたいのは、植物には花(花弁)ではなく、花に似た器官の美しさを楽しむものがあるということ。アジサイもその一つで、他の多くの植物で花とされる器官はあるものの、それは小さくてあまり目立つものではありません。一般的にアジサイの花とされているのは、『萼(がく)』と呼ばれる器官です」(福村さん)
萼は花ビラを支えるように茎との間に存在するものが多いが、アジサイの場合はこの萼が花なのである。
「アジサイを咲き方で大別すると、小さな花の周りに装飾花がつくタイプ(ガクアジサイ型)と、すべてが装飾花でつくられているように見えるタイプ(テマリ型)にわけられます。確かにアジサイという言葉にはガクアジサイも含まれるという考え方もありますが、ガクアジサイ型のアジサイをガクアジサイ、テマリ型のアジサイをアジサイと呼ぶことも少なくありません」(福村さん)
■海の近くに分布は正解
分類がわかったところで、いよいよ本題。ガクアジサイは海の近くに自生していたというのは正解なのだろうか。
「一般的には本州の海岸近くが原産とされているのは事実で、今も各地に自生しています。しかし海岸近くといっても、砂浜などではなく、どちらかというと海岸付近の林などに分布していることが多いです。全国の分布状況を完全に把握しているわけではないので推測ですが、多くの場合、海岸近くの植物は塩害(塩分の多い風のために植物などが受ける害)に強い性質があるものです。しかしアジサイは『極端に塩害に強い』という樹種ではありません」(福村さん)
もし海辺の街で目にするイメージがあるのなら、人によって植えられたとみるほうが信憑性が高いようだ。
■アジサイの語源は「水を欲しがる木」
日々新たな発見が、地球上のどこかで生まれていることもあり、正確に植物をとらえるのは難しい。そんな中、面白い話があると福村さんは語る。
「たとえば学名の『Hydrangea』はギリシャ語の『hydro(水)』と『angeion(容器)』が語源とされています。つまり、水を欲しがる木というアジサイらしい性質が学名になっているのです」(福村さん)
そういえば、アジサイは土の性質によって花の色が変わるという話もよく耳にする。これは本当だろうか。
「それは本当です。もちろん品種により異なりますが、一般的なものでは酸性なら青、アルカリ性ならピンクになります」(福村さん)
土づくりの際に、鹿沼土やピートモスのような酸性の素材を使わずに、苦土石灰などアルカリ性の素材を混ぜることで土壌をアルカリ性に傾けることができるとのこと。
花と思っていたものが実は花ではなかったり、土の性質によって花色が変わったり……。アジサイはポピュラーだが、知られていない面も多い。個性豊かな日本古来の植物ということで、これからもきっと愛され続けることだろう。
●専門家プロフィール:福村国雅
ガーデニングサポートの 株式会社ピエトラ 代表。樹木医、オーガニックガーデンマイスター、グリーンアドバイザーなど、植物に関係する多くの資格を持つ。ピエトラ監修の書籍『花屋さんの花 楽しむ図鑑-フローリストに教わる227種』(池田書店)も好評発売中。