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現在、旧過失論と新過失論はどのように違うのか漠然とした状態にあります。
無価値・予見可能性等々、ぼんやりとしたものは得られかけてはいるのですが
まだ固定した概念が自分の中で出来上がっていない状態です。
分かりやすい解答をして頂けたら幸いです。

A 回答 (1件)

過失犯では、注意義務違反によって犯罪を生じさせた場合に刑法上の過失責任を問われることになっています。


過失論で検討される事項は、大きく分けて、「結果予見義務」と「結果回避義務」の二つです。この二つが注意義務の内容です。

旧過失論と新過失論の対立とは、この二つの要素のうち、どちらを重く見て注意義務違反の有無を検討するかという対立です。

旧過失論は、結果予見義務を中心として考えます。
「結果発生を予見(日常用語で予測、想像)できたにもかかわらず、結果を発生させてしまった」ことを理由に注意義務違反を認めるものです。
たとえば、車を運転していれば、運転操作を誤り、他人に怪我をさせることも予測できる。にもかかわらず、結果(傷害結果、死亡結果など)を発生させてしまったときには、過失責任を問われることになります。
逆に、結果発生が予見できなかった(予見可能性を欠く)ときは、注意することが不可能なのですから、過失責任を問うことはできません。
たとえば、何の害もない薬品を2つ混ぜ合わせたら、偶然空気中にある物質と化学反応を起こして、有毒なガスが発生し、人が死亡したなどというものです。
(モデルケースなので、細かい点は省きます)

これによると、過失とは、専ら行為者の注意が行き届いていたか、という精神的な面が問題とされますから、過失の本質は責任要素ということになります。
とすると、構成要件と違法性の段階は故意犯と同じ構造になります。
これを前提とすると、結果発生に対して故意があったのか、過失があったのかということが故意犯と過失犯の区別基準とされますから、結果発生を基準とする刑法論の結果無価値と結びつくことになります。

ちなみに、旧過失論では結果回避義務というのは、過失の認定自体には大きな要件ではないので、過失が認められるが、過失犯として処罰することがあまりに妥当でない結果の場合に、回避可能性を検討して例外的に過失犯の成立を否定するという使い方になるでしょう。
(このあたりは深く検討には入りません。モデル理論なので)


これに対して、新過失論とは、結果回避義務を中心に過失犯の成立を考えます。
旧過失論では、結果発生を予見できた以上、ただそれだけで過失犯を認めることになる、という批判を前提としています。

新過失論の場合は、結果発生を予見できることを前提として、その結果を回避することができるにもかかわらず、回避できなかった場合に過失犯の責任を肯定するものです。
ここでは、結果予見義務というのは、結果回避義務の存在の前提として働きます。
この見解では、結果発生を予見できた(危険な行為をするということを予測できた)としても、これを回避する注意を果たした行為(結果回避行為)を行えば、過失責任を否定するという価値観を持っています。
(許された危険の理論などはこの考え方を基礎としています。)

たとえば、車を運転していれば、運転操作を誤って、通行人に死傷結果を発生させることを予測できる。
ということは、運転者には、通行人に死傷結果を発生させないように適切に車の操作を行うという行為義務があるのだ。この行為義務をできるかぎり守って運転していれば、過失責任を問う必要はないと考えているのです。
交通法規をすべて守って走行中、突然路地から猛スピードで他の車が飛び出してきて衝突し、その車の運転手を怪我させたというときには、
「結果(他の車の運転手に怪我をさせること)は予測できても、猛スピードで突然飛び出してくる車を避けることは事実上不可能」という判断で、結果発生を回避できなかったという処理をします。

このケースでは、「飛び出してくる車に対して、自分の車を適切に操作して、衝突を避けるという行為」を想定できます。これを結果回避(義務)行為といいます。

以上を前提とすると、適法な結果回避行為を想定することができる(これを結果回避可能性があると表現します)場合に、この行為に反したかを問題とするので、適法行為違反、つまり違法行為を問題とすることになります。
そこで、行為を中心に刑法論を考える行為無価値の考え方と結びつきます。
この見解では、過失犯は、結果回避行為を想定できる場合にのみ構成要件該当性、違法性を考えることができますから、責任要素であるとともに違法要素でもあるということになります。
(責任要素でもあるというのは、予見可能性という精神面を考えてることに変わりはないからです。)

以上、他にも派生した問題等いくつもありますが、この辺が基本中の基本です。
このように一つの流れとして考えておけば固定した概念として十分かと。
これだけ長くなってしまうのです。この問題は・・・。
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この回答へのお礼

とても分かりやすく、旧過失と新過失の違いをはっきりと認識することが出来ました。
お答え頂きありがとうございました。

お礼日時:2007/06/20 11:47

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