No.2ベストアンサー
- 回答日時:
劣化ウラン弾といっても、全てウランでできているわけではありません。
ウラン238が使われているのは弾芯といって弾丸の中心部に使われているだけです。その周囲は発射や飛行に適するようにコーティングされ、整形されている(ダーツのお化けのようなもの)ので単純な材質の密度の比較で武器としての性能(貫通力)を比較するのは適当とはいえません。
それでもというのなら、大体鉄の2~3倍、鉛(一般的な弾丸の材料)の1・7~8倍といわれています。
またウラン238天然ウランから核分裂を起こすウラン235(含有量は1パーセント)を取り出した(濃縮という作業)いわゆる残りカスですので、材料として非常に安価であるという特性が挙げられます。
その劣化ウラン弾を搭載した米軍の主力戦車M1A1シリーズの弾薬であるM829装弾筒付翼安定徹甲弾の走行貫通力は約650ミリメートルといわれています。
イラク軍の主力であるT-72M1で450ミリ、一世代前のT-62で200ミリですからその差は歴然でしょう。
T72の耐弾能力が450ミリ、T62に耐弾能力が300ミリですからまさに歯が立たないとはこのことですね(米軍の戦車は約700ミリ)。
湾岸戦争当時イラク軍の戦車の損害は2000両とも言われます。米軍の戦車の損失は4両(そのうち2両は地雷による損失)。
この劣化ウラン弾を止めるには目には目をではないですが、劣化ウランで装甲を作るしかないですね。(ちなみに米軍の戦車は劣化ウランが組み込まれた複合装甲を採用)
米軍関係者は劣化ウラン弾の威力ついて「まるで解けかけのバターにナイフを入れるようにイラクの戦車を貫通した」と表現し、絶賛していますが、環境、特にイラク国民に対する人的被害はご存知のとおりです。
この回答への補足
ありがとうございます。
専門的に大変良くご存知で、敬服しました。
武器性能という限りで捉えれば、全く破壊的な性能なんですね。
----
折角ですので、あと2点ほどお願いできればと思いまして、
お手数かと思いますが、よろしくお願いいたします。
1.貫通力が○○ミリという場合に、
たぶん、ターゲットまでの距離も関係するんじゃないかと思うんですが、
その辺りはどのように理解しておけばよろしいんでしょうか?
もしかすると、いわゆる射程距離というのは主に命中精度が関係して、
当たりさえすれば威力はそんなに変わらないということでしたら、
その射程距離の面では、旧来型と比べてどんな感じなんでしょうか?
2.ご説明の、「バターにナイフを入れるように」というお話からしますと、
貫通力というのは、単純な衝突衝撃だけでなく、
一時的な高温の発生も関係してくるのかと思ったんですが、
その辺りはどんな状況なんでしょうか?
--
No.3
- 回答日時:
No.2です。
補足に対してできる限り回答します。説明の都合上(2)のほうから回答します。 着弾時に熱を発生させて装甲を焼ききるとおっしゃっていますが、そういう弾丸もあります。HEAT(High Explosive Anti-Tank、ヒートとよむ)といいます。これは着弾と同時に弾丸の中の爆薬が着弾方向に噴射し、その高熱によって装甲を焼ききり中の人員を殺傷するもので、一世代前の戦車はこれが主流でした。
それに対して現在の戦車は先ほど(No.2で説明した)ダーツのお化け(運動エネルギー弾)が主流です。日本の戦車で言えば旧式の74式戦車はHEAT、新型の90式戦車は運動エネルギー弾です。(今のところ劣化ウラン弾ではありません)
運動エネルギー弾も着弾時に熱を発し、貫通を助長しているのかもしれませんが、あくまでも運動エネルギーによって貫通することを主眼においたものなのであまり考える必要はないと思われます。
「バターにナイフをさしたように」はあくまでも米軍のスポークスマン個人の表現であり私の見解ではありません。
ちなみに90式戦車も、先ほどのM1A1もHEATを射撃することもできますが、この場合は軟目標(非装甲車、人員など)を対象にした射撃など多目的に用います、あくまでも対戦車砲としては運動エネルギー弾を射撃します。
(1)貫通能力の表示の仕方についてですが、これはあくまでカタログスペックであり、ある一定の同一環境のおいて割り出してあるもの、つまり同じ距離において射撃したときの基準です。何メートルかって・・・・すみません、日ごろあまりに当たり前にこの基準を使っているのでつい忘れてしまいました。至近距離であったことはなんとなく覚えているのですが・・・・(反省)。
次に射程距離のことですが、これも先ほどと同様に材質以外の条件を全て同じにしなければ比較はできないと思われます。つまり口径も発射薬の量も弾丸の形状も全て同じ鋼タングステン弾と劣化ウラン弾を作らなくては比較することはできません。 ・・・が、想像するに運動エネルギーの減退においてそれほど劇的な違いはないのではないかと思われます。
湾岸戦争において米軍の戦車がイラク軍の戦車を圧倒したのは単に射程距離だけでなく(もちろんこれも米軍が上だが)暗視装置の性能や情報収集力、射撃統制装置の正確さや航空機の支援などの要素をフルに活用した結果イラク戦車の射程外から正確に初弾から命中させられたからであると思われます。
こんなところでいかがでしょうか。
克明なご説明をいただきまして、大変ありがとうございました。
お手数を掛けました。
>「バターにナイフをさしたように」はあくまでも米軍のスポークスマン個人の表現であり
> 私の見解ではありません。
大変失礼しました。
たとえば、「ご説明の中で引用されている・・・」のようになり表すべきところでしたね。
----
それにしても、一発の弾を発射するのには、だだズドンとぶっ放すという話じゃなくて、
ハードソフトに亘った膨大な技術的な裏付けや、
複雑な戦術判断が伴うものなのだということが、改めて良く分かりました。
戦争自体の是非や環境影響などに関する論議があるのも当然承知していますが、
いずれにしても、武器性能についてもある程度は知っておきたいと思っていたところでして、
今回は大変勉強になりました。 重ねまして、ありがとうございました。
----
射程距離の関係については、追って項を改めておたずねしてみようかと
思っております。
--
No.1
- 回答日時:
具体的な性能は知りませんが、打ち抜きということに関して言えば、弾の直径方向の断面積あたりの重量に比例して良くなります。
終末弾道だけではなく、中間弾道においても空気抵抗の影響が小さくなり速度が減少しなくなりますから、弾道が平伸して有利ですね。砲身内弾道に関して言えば、加速性が悪くなります。そこで装弾筒をつけて断面積を大きくし、砲口外で分離させます。
さらに燃えやすいようですので、着弾後発火して焼夷効果も期待できるようです。
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