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小説や随想・エッセイの文章は、「散文」と呼ばれ、「散文詩」とは確かに区別されます。どこに区別があるのかは、あまり散文詩に関与していない人には、難しいというか、何が区別なのか、分からないとうことは当然だとも思います。
少し、詩の歴史を振り返って見ます。元々、「詩」あるいは「歌」と呼ばれていた古代の文学は、宗教や共同体の儀式、祭儀などと関係し、朗詠や詠唱に適するように「韻文」で書かれていました。というか、朗詠や詠唱には、一定のリズムや、語尾の繰り返しや、頭音のリズミカルな反復などがあると、朗唱しやすいので、そういうリズム的な言葉になったのです。
また、詩の技術で、古代の詩は、ホメーロスの詩にあるような、「定型修飾辞」、例えば、英雄アキレウスには、「神のような」とか「脚の速い」つまり、diios, ookys などが付くと言うような暗黙の規則がありました。これは、イメージを再現し易くすることと、アキレウスを特徴付ける、また「音調」を整えるという大きな目的もありました。日本の枕詞も、ほぼこれと同じ機能を持っています。
古代の詩は、はっきりと、日常語とは違っていたと言えます。朗唱し、記憶し、リズミカルに、美しいまた雄壮な響きで、人々の前で、語るのに相応しいような、特別な「言葉の形式」でした。
こう言った、広い意味の「韻文構造」は、その後の詩文学でも継承されます。日本の紫式部の『源氏物語』は散文作品とされますが、実際に原文を声に出して読むと、流れるように軽快で美しい言葉の響きがあります。これは、散文であっても、なお、韻律構造を備えていたからです。
「詩」には、二つの側面があるということは、古くから言われてきました。一つは、「詩は音楽に憧れる」ということで、これは、詩の持つ韻律性、音楽的な言葉の持つ可能性を評価した側面です。しかし、他方、詩は、意味や心の思いや、精神が「凝縮された」「意味の結晶体」であるという見解があります。「意味の結晶体」とは何かということです。これは、とりあえず、わたしがこう言ってみたのですが、一般には、「詩の持つポエジー」ということになります。「ポエジー」は、フランス語で「詩」のことですから、同義反復となっておかしいのですが、日本語では、「詩の意味的本質」を、「ポエジーの有無」ということで考えます。
「詩」が「詩であること」即ち「ポエジーを備えるかどうか」が実は問題になり、散文と散文詩の違いは、前者にはポエジーがなく、後者にはポエジーがあるということになります。では、その「ポエジー」とは何かということになります。「韻文構造」なら、言葉の発音上の特性として見分けることができます。しかし、ある文章に、「詩を感じた」「ポエジーがある」とは、どういうことなのか、これは難しい問題になります。
散文詩の「ポエジー」は、言語や詩文の歴史にある程度通じている人のあいだで、初めて意味があるとも言えます。俳諧や連句の句の味わいも、或る程度の前提となる教養がないと、十分に句が味わえません。散文詩の場合、どういう言葉の使い方をしているか、その言葉のつながりによって、どういう言語空間・意味の空間が構成されているか、それなりに、言語や散文詩について、親しんできた人には、構成が「見える」と言いますか、詩的言語空間の構成が、感受できるのです。
これは、相対的な感性の問題に、実は落下する可能性があり、一部の批評家や詩人たちが、自分たちで、勝手に、くだらない文章を、素晴らしいなどと褒めていて、ある期間、作品が優れた散文詩として評価されていても、時代が変わって来ると、ただの奇をてらっただけの無意味な言葉だという評価になることもあります。
散文詩は、既存の、また伝統的な散文詩を多く読み、言語がどのように使われいるのか、そのことについての深い理解がないと、散文とどう違うのかの区別が難しいです。また、区別したつもりになっていて、上に述べたように、時代が変わると、ただの愚作だということにもなりかねません。批評家や詩人の「主観」のなかに、散文詩のポエジーはあるのだとも言えます。
言語学的に「ポエジー」を解析することもできますが、それは、新しい言葉の結合がもたらす新鮮さ、新しい言語の意味空間の創出とうことになるでしょう。また「美」や「感動」や、様々な「感情」もまた、言葉の組み合わせなどで、新しく表現可能になるとも言えます。その新しい意味空間を鑑賞できるには、それだけ言語とその現在の流れを理解し、ポエジーの感性を持っていなければならないということになります。「散文詩」は、個々人の主観とも言え、しかし、また新しい意味の空間を切り開いている場合は、そこに客観的なポエジーの創造が成立しているのだとも言えます。
言語は、その意味の表現方法や、意味そのものも、進化しているのです。日常的な表現や意味を越えて、言語の可能性を開こうとする試みで、新しいポエジーの可能性が試みられ、これが散文詩だと言えます。
こんなにも詳しく答えていただいて、本当にありがとうございました。わたしは誰にでも区別がつくものだと思っていましたがそうではないんですね。

No.2
- 回答日時:
我々が日常書いている文章(手紙、感想文など)は何の制限も受けない文なので散文です。
小説やエッセイも同じく長さの制限も行数も文章の形も自由なので散文です。同様に古来からの詩の制約を受けず、自由に詩心を文章化したものが自由詩です。詩ですから作者それぞれとはいえある種のリズムはあるかと思いますが、テーマーも字数も行数も音数も自由です。勿論韻にもこだわりません。うまいか下手か、人の心を打つかどうかは別として、散文詩は誰にでも作れます。特に物事に先入観を抱かず、また己を飾ろうとしない幼児、児童の書く文章は、散文というより、常に散文詩になっています。お探しのQ&Aが見つからない時は、教えて!gooで質問しましょう!
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