■れんげ草を田に鋤き込んで作る「れんげ米」
山田養蜂場の広報担当で管理栄養士の資格を持つ坂井裕子さんによると、「れんげ米」とはれんげ草を鋤き込んだ田んぼで作ったお米のこと。れんげ草という有機肥料を主に使って栽培するため、化学肥料のみで作られたお米に比べて安全性が高いのが大きな特徴だそうだ。
れんげ草はゲンゲとも呼ばれ、田んぼなどの湿った場所に生える植物。春に紅紫色の花を咲かせるのが特徴で、良質な蜂蜜の元となる蜜源植物としても知られている。道端などに自生することもある身近な植物なので、日常的に目にするという人もいるのでは? そんなありふれたれんげ草が、なぜお米の肥料になるのだろうか。
「れんげ草はマメ科の植物で、土壌中の根粒菌という微生物と共生しています。その菌がれんげ草の根っこに根粒と呼ばれるコブを作り、空気中の窒素を蓄えてくれるんです。その根ごと田んぼに鋤き込むことで、植物の成長に欠かせない栄養素である窒素を行き渡らせ、土壌を肥やすことができるのです」(坂井さん)
ひと昔前まで、れんげ農法はごく一般的な農法で、国内各地で春頃に満開のれんげ畑を見ることができた。しかし、現在は化学肥料による栽培が主流になり、農家が田んぼにれんげの種を蒔かなくなったため、れんげ畑自体が急速に減りつつある。その理由は、れんげの花が咲く時期も関係しているという。
「稲には生育の早い早稲(わせ)や、遅い晩稲(おくて)などの品種があります。しかし、れんげ農法の場合は、れんげ草が咲くのを待ってから田んぼに鋤き込む必要があるので、育てられるのが作付けの遅い中稲(なかて)~晩稲に限定されてしまいがち。しかもれんげの花が咲くのがGW前後なので、田植えの時期がどうしてもGW後になってしまうんですね。現在は兼業農家の方が多いので、そうすると田植え自体が難しくなってしまう。そのため、れんげ農法自体が減ってきているのです」(坂井さん)
■もっちり冷めても美味しいお米
山田養蜂場が契約農家と岡山県鏡野町でれんげ米作りに取り組み始めたのは、蜜源植物としてのれんげが減ることに対しての危機感や、環境に優しく安全なお米を提供したいという想いがあったという。
「れんげ米作りに取り組んで20年以上が経ちますが、その間にさまざまな工夫してきました。たとえばれんげ農法と相性のよいお米の品種。昨年からはキヌムスメ100%にしました。これは、キヌムスメが晩稲で育てやすいうえ、丈夫で茎が倒れにくく、お米を炊いたときにもっちりして美味しいのが理由です」(坂井さん)
とくに岡山県鏡野町は地域的に寒暖差があるためか、お米の旨みが増すようで、山田養蜂場が販売しているれんげ米は風味の豊かさ、香りの良さが好評だという。
「粘り気のあるもちもちした食感が特徴なので、冷めても美味しく食べられるのもメリットです。お弁当やおにぎりなどには特に向いていますよ」(坂井さん)
ちなみに、れんげ米をより美味しく食べるには「お米を炊くときに、米3合に小さじ1くらいのはちみつを加えるのがおすすめです。はちみつがお米に浸透して保水性を高めると同時にお米の旨みを引き出してくれるので、すごくふっくらと美味しく炊きあがりますよ」とのこと。この方法は、れんげ米以外のお米にも適用でき、古米でもまるで新米のように美味しくなるそうなので、日頃の炊飯に活かしてみてはいかが?
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