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多くの企業が導入している内部通報制度は、以前は密告制度などと揶揄されていた。しかし止まらぬ企業の不祥事と、2015年に制定されたコーポレートガバナンス・コードが追い風となり、現在は不祥事防止のために有効な制度として認知されつつある。しかしいざ告発者として制度を利用する場合、本当に身元が保証されるのか不安に思う人もいるだろう。教えて!gooでも「内部告発で身元がバレない様にしたい」というタイトルで投稿者の不安とともに質問が投稿されているが、このような問題を解消するために2006年に公益通報者保護法が施行された。
しかし予てからその実行力は疑問視されており、一向に減る気配のない企業の不祥事と相まって、昨年大幅に改正された。そこで今回は公益通報者保護法の概要や制定の背景、そして改正がどのような内容になっているのか富士見坂法律事務所の井上義之弁護士に話を伺った。
■公益通報者保護法とは
そもそも公益通報者保護法とは一体どんな法律なのだろうか。
「公益通報者保護法は、国民生活の安心安全を脅かす企業不祥事を防止する観点から、公益のために通報した事業者内部の労働者を保護する法律です。企業にとっても、通報に適切に対応して自浄作用を示し社会的信用を回復させるメリットがあると思います」（井上義之弁護士）
企業にとってもメリットがあるというのはたしかに頷ける。
■公益通報者保護法制定の背景とは
公益通報者保護法制定の背景はなんだったのだろうか。
「2000年ころから食品偽装やリコール隠しなどの企業不祥事が内部通報をきっかけに相次いで発覚し、社会問題化しました。そして、内部通報をした労働者が企業から報復的な不利益取り扱いを受けないようにする必要性が認識され、公益通報者保護法が制定されるに至りました」（井上義之弁護士）
不正は企業の成長の妨げになる。その不正が内部通報によって防ぐことが可能だと考えると、その告発者は良い行いをしたわけなのだから守られて然るべきだ。
■告発者が保護されるための要件は
次に公益通報者保護法の概要を聞いてみた。
「労働者が、事業者内部の一定の法令違反行為について、（1）事業者内部、（2）行政機関、（3）その他の外部機関（報道機関等）に通報を行った場合に、通報者に解雇その他の不利益な取り扱いをすることを禁じる仕組みです。通報者が保護されるには、通報先ごとに異なる要件を満たす必要があり、（1）＜（2）＜（3）の順に要件が厳格になります」（井上義之弁護士）
通報先によって保護されるための要件が異なるのは注意が必要だろう。
■改正で何がどうかわるのか
最後に2022年6月施行となる改正公益通報者保護法の内容を聞いてみた。
（1）保護対象者の拡充等
「保護対象に退職後1年以内の者や役員が追加されました。また、通報対象となる行為に行政罰対象の行為が追加されました。さらに、通報に伴う損害の賠償を通報者に請求できないことが明記されました」（井上義之弁護士）
（2）外部に通報するための要件の緩和
「詳細は割愛しますが、行政機関や報道機関に通報しても保護されるケースが増えました」（井上義之弁護士）
（3）事業者等に対する義務付け
「事業者に対して内部通報に対応するための体制整備が義務付けられます（但し従業員300人未満は努力義務）。内部通報等に従事する者に対して通報者を特定する情報の守秘が義務付けられました（違反者は刑事罰）」（井上義之弁護士）
（4）行政措置の導入
「内閣総理大臣は、事業者の内部通報への対応体制整備に関して、助言・指導及び勧告ができるものとされ、勧告に従わない場合は公表できることになりました」（井上義之弁護士）
大きなポイントは告発者を探す行為が禁じられた点だろう。もしも告発者を探した場合は義務違反となるため、事業者は特に注意が必要だ。
●専門家プロフィール：弁護士 井上義之（第一東京弁護士会） 事務所HP ブログ
依頼者の置かれている状況は様々です。詳しい事情・希望を伺った上で、個別具体的事情に応じたきめ細やかなサービスを提供することをモットーに業務遂行しております。
記事提供：ライター o4o7／株式会社MeLMAX
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