■バナナが傷みやすい条件
特に、夏場のバナナは、常温保存しているとすぐに皮が黒くなり熟れすぎてしまうが、このメカニズムはどうなっているのだろう。
「気温が高い夏場、バナナは早く熟します。皮に生じる黒い斑点は『シュガースポット』と呼ばれ、バナナが熟して甘くなってきた状態ですが、熟度が増し、皮全体が褐色になってしまうと『過熟』となり、果肉は軟化し生食に適さなくなります」(日本バナナ輸入組合)
皮が黒くなる状態は、冷蔵庫で保存した場合も見られるが、これは過熟状態と同じ現象だろうか。
「南国のフルーツであるバナナは寒さに弱く、冷蔵庫などの低温で長時間保存すると皮が黒くなってしまいます。これは『低温障害』と呼ばれる現象で、冷やされることでバナナの細胞が壊れてむき出しになり、皮に含まれるポリフェノール類が酸素にさらされる(酸化する)ことが原因で生じます。バナナが熟す過程での皮の褐変も、熟度の進行とともに果皮組織が老化進行し、細胞にあるポリフェノール類が酸化することによります」(日本バナナ輸入組合)
過熟状態にしても、低温障害にしても、皮に含まれるポリフェノール類の酸化により皮が褐変するということだ。ただ、冷蔵庫保存での低温障害による褐変の場合は、皮をむいた時に果肉がきれいであれば生食に関しては特に問題ないそうだ。
■皮の色の違い(熟度)により異なるバナナの健康効果
皮が黄色いバナナや褐変したバナナなど、皮の色によりバナナの栄養価は異なるのだろうか。
「バナナは、熟成が進んで徐々に甘くなっていく(追熟)果物です。店頭に並び始めたばかりで、バナナの両軸に緑色の部分が残っている『青めバナナ』は、食物繊維と同様の働きをする“難消化性でんぷん”と呼ばれる成分が多く含まれるため、腸の働きを活発にし、腸内環境を整える効果が期待できます」(日本バナナ輸入組合)
では皮が均等に黄色になっているバナナはどうだろう?
「皮が黄色く果肉に程よい弾力がある『黄色バナナ』は、甘み、香り、噛みごたえのバランスがよく、ビタミンB2やB3(ナイアシン)、B6が豊富な状態なので、美肌効果やアンチエイジング効果が期待できます。シュガースポットが所々に現れ、深い甘みと芳醇な香りを持つ『茶色バナナ』は、免疫の働きを高めることが期待できます」(日本バナナ輸入組合)
見た目は似ていても、低音障害により褐変した「茶色バナナ」の健康効果は、あまり期待できないとのことだった。
■バナナの適した保存方法
スーパーなどでバナナを購入すると、一房に3~5本ついており、一人暮らしなどでは食べ切る前に過熟してしまうことも多いだろう。バナナの保存に適した温度を聞いてみた。
「バナナは、15~20℃の風通しのよい場所での保存がおすすめです。気温の高い夏場のバナナは熟成が早く進みますが、熟したバナナは、新聞紙かビニールに包んで冷蔵庫の野菜室で保存すれば、若干日持ちします。一方、寒い時期は、13℃以下になると熟成が止まってしまうため、日当たりのよいリビングなど、比較的暖かい場所での保存をおすすめします」(日本バナナ輸入組合)
温度は分かったが、他に心がけることはあるだろうか。
「フックにバナナをぶら下げる『バナナスタンド』を使うと、バナナ自体の重みで柔らかい果肉が傷んでしまうのを防げます。房のまま置く場合は、床との接地面が少しでも少なくなるよう、山型に伏せて置くとよいでしょう」(日本バナナ輸入組合)
バナナは熟成度が増すにつれ、衝撃に弱くなるので気を付けたい。
今回の話を聞いて、店頭で並ぶバナナが人の口に入るまで、どのように変化していくのかが分かった。しっかり保存した上で、青めバナナ、黄色バナナ、茶色バナナと、熟成度で食べ比べするのもよいかもしれない。
●専門家プロフィール:バナナ大学
バナナの輸入統計、調査に関する活動、バナナを普及させるための広報活動などを軸に事業活動を展開する「日本バナナ輸入組合」が運営するウェブサイト。バナナの栄養、健康効果、植物学、歴史、簡単レシピなど、バナナにまつわる情報が満載!