■イラッとしたときの対処法
背負っているリュックが周りの人に当たっていることに気づかない人や、イヤホンが音漏れしている人に、イラッとした経験はないだろうか。
「思わずイラッとしてしまいますが、その気持ちを全面に出すと、相手の態度が余計に悪くなったり、揉めてしまうこともあります。そのため、『恐れいりますが、リュックが当たって痛いので、前に持って頂けないでしょうか』とか、『すみませんが、もう少し音を小さくして頂けないでしょうか』と、相手に依頼するような言い方で伝えると、角が立たずよいでしょう」(矢部さん)
なぜかドア付近で乗り降りの邪魔をしている人にはどうすればよいだろう。
「ドア付近で動こうとしない相手に対しても、ついイラッとしてしまいがちですが、そこはこちらから一言、『失礼します、通してください』とか、『すみません、降ります』などと伝え、気持ちよく通り抜けましょう」(矢部さん)
「リュックが当たって邪魔なんですけど」「音が漏れていてうるさいんですけど」などと、自分が不快に思う気持ちを相手にストレートにぶつけたり、ドア付近に立つ人を無言で押しのけて乗降車するのは、喧嘩腰に見えてトラブルに発展しかねない。苛立つ気持ちをグッとおさえ、まずは「相手に依頼する気構え」を持つことが大切だろう。
■人に迷惑をかけないような、満員電車内での過ごし方
他人との密着度が高く、自由に身動きが取れないだけでなく、空気も悪く不快指数の高い満員電車内。しかし、さほど不快に感じてなさそうな、“マイペースな人”や“傍若無人な人”を見かけるが……。
「肩が当たってしまうほどの距離に他人がいることを、不快に感じない人はいないでしょう。自分だけではなく、その場にいる誰しもが同じ気持ちを持っているはずと認識し、自分勝手な振る舞いは控え、互いに配慮することが大切です」(矢部さん)
では、周りの人の迷惑にならないため、満員電車で心がけるべきことはあるだろうか。
「自分のスペースを死守しようとする人が一人でもいると、周りの人をイラッとさせ悪循環になります。リュックや荷物は身体の前側に持つことを心がけ、新聞を読んだり携帯電話を使用するときは肘を張ったりせず、周りのスペースに配慮しましょう。その心がけが行動に表れることで、周りの人も気持ちよく、心穏やかに過ごせるものです」(矢部さん)
自分の権利を主張せず、公共の場であるという認識が必要だ。それぞれが「みんなも不快」ということを理解し周りに配慮しようと心がければ、毎日の満員電車でのストレスは、きっと減るに違いない。このような心がけは、満員電車に限らず、他人の集まるあらゆる場において、あって然るべき“大切なマナー”なのだろう。
●専門家プロフィール:矢部 恵子
(株)エリタージュ代表取締役。パークハイアット東京勤務後、スイスにて就職。帰国後、外資系証券会社勤務を経て、銀座フィニッシングスクール ティアラファクトリーを設立。現在は、銀座校・パリ校にて、上質なプロトコールマナーを指導している。