
■土星には生命体が存在する!?
最近はどのような発見があったのだろうか?
「宇宙には謎が多く、その分、日々いろいろな発見があります。近年の大きなトピックの一つは、2017年9月にカッシーニが土星の大気圏に突入し、長年の探査のグランドフィナーレを迎えたことでしょう」(坪井さん)
カッシーニって?
「アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)が共同で開発した土星探査機です。カッシーニは土星に加えて土星の衛星であるエンケラドスやタイタンも観測しました」(坪井さん)
土星といえば、あのドーナツのような輪がある惑星だ。
「そうですね。実は土星には生命体が存在しているという説があり、カッシーニの探査によって、その可能性が高いことが分かりました。エンケラドスでは水が噴き出しているのが観測され、タイタンではホイヘンス(カッシーニに搭載されていた探査機)によって液体状態のメタンが存在することが発見されました」(坪井さん)
土星には宇宙人がいる可能性もあるのだろうか。
「生命体の可能性はありますが、宇宙人となると……。まぁ可能性はゼロではないとお話ししておきましょう。日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が『はやぶさ2』を使って行っている小惑星・リュウグウの探査も、これからの報告が楽しみです」(坪井さん)
宇宙や生命の起源の情報を多く含んでいる可能性がある小惑星や衛星への探査は今後も加速していくと考えられるとのこと。
■ブラックホールが観測された!?
ほかには、どのような話題があるのか?
「宇宙の謎として知られているブラックホールも解明されつつあります。2015年9月に、アメリカのレーザー干渉計重力波天文台の2台の検出器によって人類初の重力波の直接検出がされました。重力波の直接検出自体が大きなニュースですが、研究者をさらに驚かせたのは、その重力波の源が、およそ30倍の太陽質量を持つ2つのブラックホールの合体によるものだということです」(大谷さん)
ブラックホールが2つあること自体が驚きだ。
「目視などの明確な方法で観測されたわけではないので、ブラックホールの『あるなし論争』が完全に決着したわけではありません。ただ、その後も重力波の観測は続けられていて、2017年には4回も観測されています」(大谷さん)
ブラックホールが宇宙に複数存在し、それらが合体することが示唆されていること自体が大きな進歩なのだ。
■ロケットでの移動が当たり前になる!?
最近、何かと話題の宇宙旅行は現実的なのだろうか?
「その話題で注目したいのは、アメリカの実業家、イーロン・マスクです。彼は2005年にスペースXという会社を設立してロケットの開発をしています。その会社が2018年2月に超大型ロケット『ファルコン・ヘビー』の初打ち上げを成功させました」(坪井さん)
民間企業のロケット開発は、国内でもTBSテレビ 日曜劇場『下町ロケット』が話題になっているが。
「確かに。ただ、イーロン・マスクのすごいところはロケット開発だけでなく、その先も見据えているところです。2017年8月のIACというカンファレンスで、『全世界に移動する手段として、ロケットを活用し、どの国への移動も1時間圏内にする』という革命的なビジネスを発表しました」(坪井さん)
ロケットは目的ではなく、あくまで手段なのだ。
「値段も現在の飛行機のエコノミークラス以下の価額を5年以内に実現するとのことです。将来、ロケットへの搭乗が当たり前になる日も近いかもしれません」(坪井さん)
世界のどこにでも1時間でいけるのは本当にすごいことだ。
今回の取材で、近年の宇宙の解明やロケット技術の進歩はかなりなものであることが分かった。新たな生命体との出会い、時空の解明、交通手段の革命など……。はたして、我々の生活に利益をもたらすのは、どの計画からだろうか。
●専門家プロフィール:株式会社うちゅう
2016年創業。宇宙に関する教育の企画・開発や宇宙関連の開発事業など、さまざまな宇宙に関わる業務を行っている。現在は研究をベースに、宇宙やロボットやドローンなど、最先端のテクノロジーを基軸とした小学生対象の『スクール事業』に力を入れている。