■我が子に整形を勧める親の心理
近年、整形に寛容な国との文化交流やSNSの情報などにより、日本でも整形に対する心理的ハードルが下がっている。そんな中、子どもに整形を勧める親がいるようだ。どのような心理が背景にあるのか。
「親が我が子に整形を勧める場合、さまざまな心理的要因が考えられます。親自身が容姿にコンプレックスを抱えていたり、容姿で損をしたと感じる体験があり、『子どもに同じ苦労をさせたくない』という思いがあることが考えられます」(吉田さん)
子どもに苦労をさせたくないのは、どの親も同じではあるが……。
また、子育てや子どもの将来への不安も一因とのこと。
「日本の子育て環境は母親のワンオペになりやすく、母親に余裕がないケースが多いです。そのような中、子どもが不登校やひきこもりにならないよう育て、少しでも有利な位置につけるよう教育や習い事について考えなければなりません。常にプレッシャーをひとりで背負い込み、子育てや将来に不安を抱えていると、子どもが容姿で損をすることは許容し難いと感じるでしょう」(吉田さん)
子育てのプレッシャーの解決法として、「整形して容姿に自信を持って生きて行くほうがよい」と考えるようになることもあるのだ。
■子どもの整形は安全?心理的リスクは?
成長過程にある子どもの整形は大丈夫なのだろうか。美容整形外科のサイト情報によると、骨格が完成していない小学生などの整形でも、部位によっては安全だとか……。子どもへの心理的リスクはどうなのか、さらに聞いた。
「親に整形を勧められると、子どもは『親も自分の容姿を今のままではダメだと思っているんだ』、『親は自分が整形できれいになればOK、そうでないならNGなんだ』と感じるでしょう。また、『今の自分のままではダメで、親や社会の価値観に自分を合わせるべき』と考え、いつも人の顔色を伺い、人に合わせる生き方をしてしまうかもしれません」(吉田さん)
世間一般の整形に対する批判的な意見を、自分が責められているように感じることもあるという。
「自分は『世間が批判することをした』、『それなのに秘密にしている』などと思うようになります。また、整形をしても容姿のコンプレックスが解消されない場合は、整形を繰り返したり、『整形してもダメな自分』とますます自信を失う危険もあるでしょう」(吉田さん)
整形させ理想の容姿に近づいても、子どもが受けるストレスは未知数なのだ。
■親への心理的アドバイス
吉田さんは、子どもに整形をさせようと考える親へアドバイスをくれた。
「子どもが容姿で損をするのではないかと不安になって整形を思いつき、『やるなら早いほうがよい』、『きっと子どもも感謝してくれる』などと思うかもしれません。ですが、そんなときは整形のメリットとデメリットを考え、『他の方法はないか』、『少し待ってみてはどうか』と考えて欲しいです」(吉田さん)
整形せずに済めば、それが一番よい。また、子どもの思いは必ずしも親と同様でないこともあるという。
「そもそも、子ども自身がどの位困っているか理解する必要があります。子どもが容姿に悩んでいても、子どもが求めるものは美しい容姿ではなく、今のままの自分を応援してくれる味方であることが多いです。親は子どもの容姿に100%満足していて大好きだと伝え、本当の美しさについて親子でよく考えることが大切です」(吉田さん)
それでも尚、容姿に関する親子の不安が解消できないときは、「第三者に相談してみて欲しい」と吉田さん。
「相談相手は『整形なんてダメ』と頭ごなしに否定するような人ではなく、親子の不安や痛みに寄り添ってくれる人が望ましいです。今は『お近くの臨床心理士を探せるサイト』などもあるので、利用して頂きたいです」(吉田さん)
子どもの整形を検討している親御さんは、自身が理想とする子どもの容姿と子どもが受けるリスクを天秤にかけ、慎重になって欲しい。できれば施術を決めてしまう前に、子ども心理のプロなどに相談するとよいだろう。
●専門家プロフィール:吉田美智子
臨床心理士。公認心理師。東京都スクールカウンセラー。東京・青山のカウンセリングルーム「はこにわサロン東京」主宰。自分らしく生きる、働く、子育てすることを応援中。オンラインや電話での相談にも対応している。
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