■根気強く自分の意志を示し続ける
結婚後、義家族の不適切と思われる発言や行動があった場合、どのように接すればよいだろうか。
「『相手に変わってもらいたい』と思ってしまう自分の気持ちを切り替えましょう。対人関係の原則は『相手を変えられない』です。その人が変わろうと思わない限り変わることはありません」(きくち先生)
自分が変わらなければ相手に変化を求めることはできないのだ。
「ですので、相手ではなく自分の言動と行動に意識を向けましょう。そして自分の考え方を変えていきます。そのとき『ひどいことを言うから嫌いだ』と思わずに『上手な言い方を知らないだけなのだ』というように、その人自身と言動を分けて受け止めます。次に自分の気持ちに素直になり、誠実に困っていることなどを伝えます。怒らなくても堂々と伝えることはできます。勇気は必要ですが、根気よく自分のスタイルを示し続けてください」(きくち先生)
相手が変わらないと分かっていても、相手に対して誠実な対応をとり続けたほうがよいという。その態度とは具体的にどんなものだろうか。
「誠実というのは、怒りや嫌みのない表現です。怒りや嫌みでは相手に伝わらず、関係を悪化させてしまうばかりです。相手をどうにかしようと思わず、平常心でこちらの気持ちだけを伝えるのです。例えば借金を申し込まれ断りたい場合『どうして私が貸さないといけないのですか』とは言わず、『お金の貸し借りで立場に優劣が生じたりするのは嫌です。お互いによい関係でいたいのでお金をお貸しすることはできません』と、相手を尊重しながら伝えましょう。一度で伝わらない場合は、同じ言葉を繰り返します」(きくち先生)
どうしても嫌なことは、冷静に自分の気持ちだけを根気強く伝えるのがよい関係を保つ秘訣なのだ。はじめのうちは難しいと感じるかもしれないが、このような考え方や伝え方は、義家族以外の人間関係にも使えそうだ。
■関係悪化した場合の対処法とは?
すでに関係が悪化してしまった場合はどのような対策があるのか聞いてみた。
「不満がたまると、つい自分の実家に相手の悪口を言いたくなるものです。自分の親なら『味方してくれるはず』、『分かってもらえるはず』と、実家に言いつけてしまいたい気持ちはあるでしょう。しかし、自分の実家に相手の実家の悪口は決して言わないことが関係悪化の防御策です。すでに関係が悪くなってしまっている場合は、お互いの実家の情報を流さないようにしましょう」(きくち先生)
個人間の問題が、家族間の問題に発展しかねないのは容易に想像できる。
「うわさ話が不仲の原因になることもあります。自分以外の人の思惑を勝手な想像で話さないことも重要です。義家族や家族に誰かのことを聞かれても『本人でないので分からない』と答えることです。夫婦でもよい意味での距離が必要なのです。お互いを尊重するからこそ、踏み込まないことが肝心です。相手や義家族が踏み込んできても、困るときは困ると自分の素直な気持ちを相手に誠実に伝え続けることです」(きくち先生)
相手が踏み込んできても、踏み込まない忍耐が必要なのだ。「親戚になったからと言って、無理に仲良くしなければならないことなど何もありません」と、きくち先生はいう。いつも自分の気持ちに正直にコミュニケーションをとることが大事なのだ。そうすることによって、ストレスの少ない毎日を送ることができるのだろう。
●専門家プロフィール:きくちみよこ
家族(夫婦・親子)の人間関係の問題に特化した相談室を開設。家族相談士、心理カウセラー。聴くだけのカウンセリングではなく目標達成まで精一杯サポートしている。著書に 「しあわせ思考」がある。