しかし「室内でペット飼育をしたい!」という人に付いてまわるのが「居住物件内でのペット飼育の可否」の問題。特に分譲マンションは、その判断が難しいという。持ち家でもあるが、管理物件の要素もあることが理由だ。「教えて!goo」にも「分譲マンションは基本的にペット不可ですか?」という質問が寄せられていた。そこで今回は、「分譲マンションにおける"ペット可・不可"条件の意義」について、引越し見積もりサイト「引越し侍」編集部、清水朋香さんに話を聞いた。
■「ペット不可」条件の分譲マンションがあるのはなぜ?
賃貸物件は家主から"借り受けて"住む物件だが、分譲マンションは"購入して"居住する。「ペット飼育不可」となっている分譲マンションには、どういった背景があるのだろうか。
「賃貸と分譲というくくりの話ではなく、そもそもマンションではペットを飼ってはいけない、というのが日本での一般的な風習でした。ペットの飼育は鳴き声などの騒音や、ニオイ、またはアレルギーといった近所迷惑につながる可能性があるためです」(清水さん)
あくまで"古い風習"であると把握していれば、分譲マンションで「ペット不可」条件は気にしなくてよいのでは……。
「結論からいえば、ペット不可とされている分譲マンションで勝手にペット飼育をするのはNGです。これは、法律に則って分譲マンション内に定められた規定を破ることになります」(清水さん)
かつての習わしだったからと軽んじるわけにもいかないようだ。
■分譲マンション内における「ペット飼育可否」は誰が定める?
ペット飼育なども含めて分譲マンション内での居住ルールを定める決定権はどこにあるのか。
「分譲マンションは"区分所有建物"と呼ばれ、"区分所有法"という法律にのっとり管理規約が定められています。この管理規約内で、マンション内の所有関係や権利・義務といった一般的なルールが取り決められているのです。規約はいわば"各マンションの憲法"ともいえ、すべての区分所有者(入居者)が効力の対象となります」(清水さん)
分譲マンションは、購入すれば何事も思い通りにできる「自分の城」と思いきや、実は多人数で快適に暮らすための厳格なルールが存在する。では、マンションの管理規約内容を変更することは可能だろうか。
「管理規約は、マンションの管理組合の"総会"にて、区分所有者および議決権の4分の3以上の決議があれば、変更が可能です。しかしこの条件は、"マンションに住む人の大多数が賛同してくれること"と言い換えることもできます。ペットを飼いたい人だけでなく、一緒に住む人たちの理解と協力を得る必要があるということですね」(清水さん)
やはり、自分の意見だけでペットを持ち込むことはできないようだ。
■分譲マンションでペットを飼いたい人はどうすればいい?
とはいえ冒頭でもお伝えした通り、屋内でペット飼育をしたいという需要は高まる傾向にある。どうしても分譲マンションでペットを飼いたい人には、どのような選択肢があるのだろうか。
「安心していただきたいのが、近年の少子高齢化の影響もあり"ペット可"物件も増えている現状にあることです。これは分譲マンションにおいても同様です。00年代末頃から、首都圏におけるペット飼育可マンションの比率は90%弱をマークしています(出典:不動産経済研究所『首都圏におけるペット飼育可能な分譲マンション調査』)」(清水さん)
既にかなりの物件が、ペットとともに暮らしていける仕様に変遷しているという。ペット可のマンションを探すことは容易になっているようだ。
「大切なことはペット可だからと、近隣住民に迷惑をかけてもよいということではないことを認識しておくことです。マンションによってはペット飼育をしている入居者のみで構成される会などもあるようなので、他の飼育者たちと協力してルールを守る必要があるでしょう」(清水さん)
家族同然に大事にしている存在だからこそ、ペットとともに末永く暮らせる環境は理想だ。分譲マンションでのペット飼育を考える場合は「ルール」と「配慮」に気配りをしていきたい。
●専門家プロフィール:清水 朋香(しみず ともか)
引越しの見積もり依頼や予約サービスを提供する「引越し侍」の編集部員。大学卒業後、地方雑誌の編集を経て専門ライターとして引越し侍へジョイン。自身が経験した複数回の引越し体験と、引越し侍での執筆業務によって経た知識から引越しだけでなく、賃貸契約などにも関する幅広い情報発信を行っている。