■気持ちの切り替えが苦手な人の特徴
まず、気持ちの切り替えが苦手な人の特徴を聞いてみた。
「第一に『自己肯定感が低い』ことが挙げられます。自己肯定感が低い人にとって、世界は危険、攻撃、否定、不信で溢れています。そのため、予測、準備、我慢、完璧を駆使して生きることが必要になります。失敗と感じる範囲も広く、失敗した際のダメージが大きいため、それらを避けようとしてさまざまなストレスを溜め込んでしまいます」(青柳さん)
「プライドが高すぎる人」も切り替え下手のようだ。
「自分の立場や権威、他者に与えるセルフイメージを重視する人は、本当の自分をわかってくれる人や、本当の気持ちを話せる人がいない場合が多いです。すると、弱音や本音を自分の心の中に溜め込んでしまいます」(青柳さん)
真逆のタイプのようで、どちらも「現実との不一致」によりネガティブな気持ちを表現できず心の中に溜め込んでしまう性分なのだろう。
「人間にとって表現は重要で、閉じ込めた気持ちは深層心理に蓄積されます」と青柳さん。度を越すと、程度の差こそあれ精神疾患を生じることもあるそう。自分の気持ちを閉じ込めてしまう傾向がある人は、しっかりと対策を練りたい。
■上手に気持ちを切り替える方法
上手に気持ちを切り替える方法は大きく2つあるとか。ひとつずつ解説してもらった。
「ひとつは短期的な4つの対処法です。心を許せる相手やカウンセラーなどに『相談する』こと、難しい法律や税金手続き等の具体的な何かを負担に感じているなら専門家に『任せる』こと、どんな事柄でどんな気持ちになり“ストレス度数は100点中何点”などと『ノートに書く』こと、“涙活”といわれるように、泣ける映画などを鑑賞して『泣く』ことです」(青柳さん)
「相談する」、「任せる」、「ノートに書く」、「泣く」の4つが短期的な対処法として挙げられた。問題と距離を取ることに繋がり客観性が持てる上、自分の気持ちを表現することで「カタルシス効果(浄化効果)」も期待できるそうだ。
もうひとつの対処法は「思考を増やすこと」だとか。
「主に気持ちの切り替えを邪魔するのは、正直かつ無意識に湧き上がる『感情』です。感情は『思考』の副産物であるため、思考の幅を増やすことで感情を制御できるようになります。哲学や心理学などの本を読んだり、ジャンルを問わず映画やドラマなどを観て自分の人生で体験できないことを仮想体験すると、考え方や視野が広がり思考を増やすことに繋がります」(青柳さん)
上記のような行動を起こすことが、気持ちを切り替えるきっかけになり得るのだろう。
■気持ちの切り替えにより得られること
これまで、切り替えの重要性や方法をお伝えしてきたが、無理に気持ちを切り替えるようとするのはNGとのことだ。
「本当の気持ちを抑圧したり現実逃避したりすると、後々自分に跳ね返ってきます。ネガティブな気持ちは心を鍛えるトレーニングだと思って向き合っていけば、自己成長へと昇華させることができますよ」(青柳さん)
困難をしなやかに乗り越え回復する能力は、「レジリエンス能力(精神回復能力)」と呼ばれ、ビジネスの現場でも注目されているという。
「嫌な気持ちや苦しみ、心の痛みなどは、誰しも体験したくはありませんが、楽しみや幸せ、願いと共にあるものです。人生に避けられない痛みはありますが、苦しみは選べます。困難に対して柔軟に向き合うことで自己を成長させ生きる力を培えば、日々前を向いて生きていけるのではないでしょうか」(青柳さん)
気持ちの切り替えが苦手な人は、今日伺ったことを参考に「なぜネガティブな気持ちが消えないのか」、「どうすればそのような気持ちと楽に付き合えるか」など、原因となっている問題に真摯に向き合ってみよう。さらに「上手に気持ちを切り替える方法」を実践すれば、おのずと人生をスムーズに送れるようになるかもしれない。
●専門家プロフィール:(青柳 雅也)
「髪の毛のあるお坊さん」を目指し心理カウンセラーとして独立して13年。企業や大学・専門学校で講義を行い受講生は8,000人を超える。個人セッションは10,000件以上の実績。他にも、企業のメンタルケア、日本テレビ『ZIP』、名古屋テレビ『ドデスカ』出演など、精力的に活動を続けている。
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