
■春分の日を理解するために知っておきたいこと
「春分の日」がなぜ変わるのか、それを解明する前に、そもそも春分の日とは何であるか、そこの理解が大切だという。
「1年とは季節のめぐる周期です。季節がめぐるのは、地球が自転軸を少し傾けたまま太陽の周りを公転するからです。この状態で公転すると、自転軸の北側が太陽を向くときと、北側が太陽の反対を向くときができます。これが北半球の夏と冬で、その途中が春と秋になります」(片山さん)
そういえば昔、学校で習ったぞ。
「このようにして、地球が公転する周期、約365日が1年の長さとなり、地球がそのような位置に来る瞬間として夏至・冬至・春秋分などの時刻が定義されています。春分や秋分の瞬間を含む日が春分日・秋分日であり、自転軸に垂直な方向に太陽が来ますので、昼と夜の長さはだいたい同じになります」(片山さん)
秋分の日も同様に変化する。
■春分の日が変わるのは「6時間のずれ」が原因
ただ、「厳密にいえば、地球の公転周期は365日ではなく、約6時間多い」という。
「具体的な例を上げれば、2012年の春分の日は20日で、通過時刻は14時14分でした。翌年の2013年に通過するのは、その約6時間後の20日、20時2分です。2014年は、さらにその6時間後で、21日の1時57分となり、春分の日は21日と日付が変わります。2015年も、さらにその6時間後で21日の7時45分となります。このままいくと、春分の日はどんどんずれていくように感じますが、1年ごとに6時間ということは、4年で1日分手前に位置することになりますので、もう1日増やせば元の位置に戻ることになります」(片山さん)
つまり、毎年約6時間ずつずれて、途中で日付が変わりつつ、うるう年に元に戻るという4年ごとの変動パターンが出来上がっているのだ。
■古代人は「春分」を知っていた?
片山さんは、「古代から、人間は太陽の動き(本当は地球の自転・公転)に注目し、観測を行い、それによって季節を知り、農耕に生かすようになっていた」という。
「豊かな稔りを得るには適切な季節に種まきや収穫をする必要があります。この季節を知るのに使われたのが太陽の動きです。南中時の高さ、日の出入りの方位、日の出直前に昇る星など手法はさまざまですが、洋の東西を問わず地道な観測が行なわれ、暦として確立しました」(片山さん)
もし地球の自転軸が傾いていなかったら季節変化は起こらず、1年という概念は必要なかった。今なお使用している暦が、実は宇宙の法則に基づいていると知ると、とても興味深い。普段、何気なく使っているカレンダーを眺めながら、雄大な宇宙や地球の自転に思いを馳せてみてはいかがだろう。
●専門家プロフィール:片山 真人
自然科学研究機構 国立天文台 天文情報センター 暦計算室 暦計算室長
東京大学大学院総合文化研究科卒業後、海上保安庁水路部航法測地課を経て、現在、国立天文台天文情報センター暦計算室長。著書に『暦の科学』などがある。