この動きは自治体だけでなく企業にも及んでいる。ファミリーレストランの「デニーズ」を運営するセブン&アイ・フードシステムズが、客による迷惑行為「カスハラ」に関する行動指針を策定したと、10月16日に発表した。
教えてgooでも「カスハラ」というタイトルで、投稿者の実体験がカスハラに該当するかを尋ねる質問が寄せられており、「お客様は神様」という神話が崩壊しつつあることをひしひしと感じさせる。
ということで今回はカスハラとクレームの違いや、カスハラの法的責任、企業が取るべき対応を富士見坂法律事務所の井上義之弁護士に伺った。
■カスハラとは?
まずはカスハラそのものの意味について尋ねてみた。
「厚生労働省の作成したマニュアルで、カスハラは以下とされています」(井上義之弁護士)
カスハラ:顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業関係が害されるもの
「一般に、顧客等から企業の従業員に対して行われる行為のうち、(1)要求内容自体が理不尽なクレームや(2)要求内容を問わず手段が相当でないクレーム等がカスハラといえるでしょう」(井上義之弁護士)
度が過ぎるクレームをカスハラと考えれば良いのかもしれない。
■カスハラをしたものの法的責任は?
カスハラを行ったものは、どのような法的責任を問われるか聞いてみた。
「カスハラ行為の具体的内容次第ですが、民事的には従業員・企業との関係で不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。また、民事責任とは別に、暴行罪、傷害罪、脅迫罪、強要罪、業務妨害罪、信用毀損罪、軽犯罪法違反等の刑事責任を負う可能性もあります」(井上義之弁護士)
想像以上に重い罪に問われる可能性があることは覚えておくと良いだろう。
■企業がとるべき対応とは?
カスハラが社会問題化するなか、企業が取るべき対応はなんだろうか。
「企業は従業員との関係で安全配慮義務を負っており(労働契約法5条)、従業員をカスハラから守らなければなりません。また、企業は、社内のパワハラ行為等だけではなく顧客等による従業員に対する著しい迷惑行為に対しても、雇用管理上必要な措置を講じる義務があります(労働施策総合推進法30条の2第1項及び関連法令)」(井上義之弁護士)
「企業がカスハラ対策を怠った結果、従業員がカスハラで損害を被った場合、企業は当該従業員から損害賠償責任を追及されるおそれがあります。企業としては、カスハラ対応マニュアルの策定・研修などによる周知、カスハラを受けた従業員に対するケア等の対策を推進すべきだと思います」(井上義之弁護士)
企業にとっての神様は、お客様だけでなく、今後は従業員も含まれると考えると良いのかもしれない。
専門家プロフィール:弁護士 井上義之 事務所HP ブログ
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ライター o4o7
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