
■夏至って何?
まずは夏至についてのおさらいからだ。
「太陰太陽暦で暦日と季節感を補うために考え出されたのが『二十四節気』ですが、夏至は太陽の高さが一番高くなります。つまりは、『一年で最も昼間が長く、夜が短い日』というわけです。秋の『夜長』に対して、短く明けやすい夏の夜は『短夜(みじかよ)』といいます。また、正午の時間帯はほとんど真上から太陽に照らされるので、影が最も短くなります」(前澤さん)
小学生の頃、理科の観察で、夏至の日の影の長さを図った記憶がある人もいるだろう。夏至は日中の日が最も長く、子どもたちにとっては外で遊べる時間が長く感じられ、嬉しい日でもあるかもしれない。
「今年の夏至は2018年6月21日、期間でいいますと小暑の前日7月6日までを表します。また、ここ近年の田植えの時期は早いところで、5月に行うところもあるようですが、夏至の時期は田植えの時期の真っ只中で、半夏生(夏至から11日目)までに田植えを終わらせるのが良いとされています。この日までに終わらないと『半夏半作』といわれ、収穫が半減するといわれていたようです」(前澤さん)
夏至は田植えの目安にもなっていたのだ。
■夏至の日に食べると良いとされるもの
夏至の日に何かをするイメージは一般的にはないが、この日に食べると良いものはあるのだろうか?
「よく『冬至』には、南瓜を食べたり、『ん』がつくものを食すると良いと受け継がれていますよね。夏至の場合はその日というより、夏至から半夏生までの間に食するものが、地方により受け継がれています。有名なのが、関西地方の『蛸』です。八本の脚を持ち、農作物が大地にしっかりと根をはるように、祈願をこめて食したと受け継がれています。蛸はタウリンが豊富で、蒸し暑い時の疲労回復という点も理にかなっています」(前澤さん)
ちなみに関東地方ではいかがだろうか?
「関東地方では、二毛作であったことから小麦で作った餅を食べたそうです。日本海側の富山県、福井県で鯖を食すのは、厳しい夏の暑さが来る前に体力をつけるため。私が子どもの頃、故郷鹿児島では、ダゴ(お団子の方言)を食べて、振る舞いもしていました」(前澤さん)
■夏至の日にする風習
続けて風習についても聞いた。
「夏至の日は、北半球の多くの国で夏至祭が行われます。日本では有名なのが、伊勢市の二見興玉神社(ふたにおきたまじんじゃ)の夏至祭です。二見浦の夫婦岩の前で禊を行い、夫婦岩から登る朝日を拝みます。夏至の前後一カ月のみ朝日が夫婦岩の間から昇り、凛とした朝の気を全身に受けると、格別な清々しい気持ちになります。美しい朝日を拝みたくなる時と同じ心地よさです」(前澤さん)
また夏至に忘れてはならない『夏越の祓』についても教えてもらった。
「夏至に忘れてはならないのが、6月30日の『夏越の祓』、六月の大祓のことです。『茅の輪』と呼ばれる茅(茅草)を束ねた輪を神社の社前に設けています。『茅の輪くぐり』をすることにより身が清められ、疫病や罪が祓われるとされています。茅の輪くぐりの回り方は、左周り、右回り、左回りに八の字に三回くぐるとよいとされている習わしです」(前澤さん)
いかがだっただろうか。私たちが知らないだけで、意外と夏至の日にする風習はたくさんあることがわかったのではないか。
●専門家プロフィール:前澤暢子
鹿児島県出身進学と共に上京。約24年間大手航空会社にて国際客室乗務員として従事。早期退職後80日目に関東東北大震災で仙台にて被災。前職で培った「思いやりの心」「人間力」「国際的に通用するマナー」を活かし、仙台、東北が元気になれるよう尽力したい強い思いをもって接遇マナー講師、企業研修講師をしている。(社)日本マナーOJTインストラクター協会に所属。現在仙台市在住。https://www.maezawamasako.com/