
■辛いししとうを見分ける方法
はじめに、ししとうが辛くなる理由を聞いてみた。
「ししとうの正式名称は『ししとうがらし』といいます。もともとは辛いトウガラシを品種改良したものなので、辛み成分である『カプサイシン』がわずかに含まれています。栽培条件によりその量が増え、辛いししとうができるといわれています」(鵜藤さん)
鵜藤さんによると、「カプサイシン」の増量を促す栽培条件は3つあるとか。
「カギとなるのは『高温』、『乾燥』、『生育日数』です。『高温』や『乾燥』などのストレスを受けて育ったししとうは、種が少ない傾向にあります。『カプサイシン』を合成する物質は、種皮を作る際にも利用されます。種が少ない場合は、種皮の生成での消費量が少なく、余剰分で『カプサイシン』が多く合成されるのです」(鵜藤さん)
生育日数が長ければ長いほど、「カプサイシン」が蓄積され、さらに辛みを感じやすくなるとのこと。食べる前に見分ける方法はあるのだろうか。
「市販のししとうはパックに入ったものが多いので、種の量を触って確認することは難しいです。ストレスを受けて育ったししとうは、『ツヤがない』、『実がよじれている』、『縮れている』という特徴が見られます。生育日数が長いものは、大きく育ちすぎている場合も多いです。辛いししとうを避けるためには、『ツヤがあり、真っ直ぐの形状で、通常サイズのもの』を選ぶとよいでしょう」(鵜藤さん)
栽培条件によるカプサイシンの合成は自然環境にも左右される。辛いししとうの特徴も「絶対ではない」というが、ひとつの目安として購入時に確認してみるとよいだろう。
■辛いししとうを美味しく食べるレシピ
辛みをやわらげるポイントはふたつあるそうだ。
「ひとつめは『乳製品を使うこと』です。乳製品に含まれる『カゼイン』というたんぱく質が、舌に接する『カプサイシン』を吸着し、辛みを感じにくくさせます。ふたつめのポイントは『冷やすこと』です。辛みを感じるセンサーは43℃以上で活性化します。加熱すると辛さが増幅されるので、冷やしてから食べるメニューがおすすめです」(鵜藤さん)
辛いししとうをおいしく食べられる料理、『ししとうときゅうりのライタ』についても教えてもらった。

「『ライタ』とはインドやパキスタンで食べられる、ヨーグルトを使ったサラダのような家庭料理です。カレーなどのスパイシーなメニューと相性がよいですよ。乳脂肪分を含むヨーグルトを加え、冷やすことで辛みを抑えておいしく食べられます」(鵜藤さん)
お手軽なレシピと材料(2人分)も紹介しよう。
「ししとう5、6本、きゅうり1/2本、無糖ヨーグルト1/2パック、塩小さじ1/2、クミンパウダー小さじ1/2、すりおろしにんにく少々をご用意ください。ししとうはヘタを取ってラップで包み、電子レンジ(600w)で20秒加熱し粗熱を取っておきます。きゅうりは5ミリ角、ししとうは縦半分に切って種を除き5ミリ幅にカットします。すべての材料をボウルに入れて混ぜ合わせ、冷凍庫で冷やせば出来上がりです」(鵜藤さん)
ししとうのヘタの部分は辛みが強いため、切り落とすとよいとのこと。辛いししとうに出会わないか不安な場合も「救済レシピ」があれば安心だ。今回教わった見分け方やレシピを参考に、辛いものが苦手な人がいるご家庭でも、ししとうを使ったメニューを楽しんでみてはいかがだろうか。
●専門家プロフィール:鵜藤 佳奈(日本野菜ソムリエ協会)
日本野菜ソムリエ協会認定 野菜ソムリエプロ。青果店にて野菜、果物と触れ合う毎日を過ごしながら、メディア出演や講師など幅広い分野で活動中。美容クリニック勤務経験も生かし、野菜中心の食生活で、健やかに美しく過ごす提案を心がけている。
画像提供:ピクスタ