ちなみにステマ自体は2000年代初頭から存在していた。ただ2012年に日本で複数の芸能人が報酬や提供を受け取っていることを隠して、インターネットオークションの宣伝を行っていたことが明るみになったことで広く知れ渡った。
教えて!gooでも「ステマって通報できないのでしょうか?」というタイトルで質問が投稿されている。そこで今回は10月施行のステマ法規制によって何がどう変わるのかを解説させていただく。話を伺ったのは富士見坂法律事務所の代表をつとめる井上義之弁護士だ。
■ステマの定義
10月からステマ法規制が施行されるが、そもそもステマとはどのように定義されているのだろうか。
「今後、違法行為として禁止されるステマとは、『事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの』と定義されています(令和5年3月28日内閣府告示第19号)。わかりやすく言うと、事業者が行う広告のうち、消費者にとってそれが広告であるとわからないような形式で行われるものです」(井上義之弁護士)
広告であることを明らかにせずクチコミや感想を装って宣伝することだと理解して良さそうだ。
■ステマ法規制の違反となるかどうかのポイント
具体的にどのような行為が違反となるのか伺った。
「前述した定義に該当する行為が違法行為になります。該当するかどうかのポイントは主に次の2つです。
(1)事業者による広告といえるどうか
例えば、事業者の営業担当者が自身の役職を明らかにせずに個人のSNSアカウントで担当商品を好意的に紹介したり、事業者がSNS上で好意的に紹介してもらうことを期待してインフルエンサー等に無償で商品を提供した場合などは事業者による広告と評価される可能性があります。
(2)消費者から見て広告であることの判別が困難かどうかどうか
『広告』、『PR』、『プロモーション』といった文言が付されているネット上の投稿については、消費者は広告であるとわかりますので原則として違反行為には当たりません。しかし、例えば、『PR』という文言が付されてはいるものの、他に大量のハッシュタグをつけて『PR』表記を目立たないようにした投稿については、消費者から見て広告であることの判別が困難と評価される可能性があります」(井上義之弁護士)
PR表記をしていても、その表記次第では違反になる可能性があるとのこと。
■広告主が講じるべき対策とは
最後に違反行為とならないように、広告主はどのような対策を講じればよいのか伺った。
「事業者としては、広告活動や役職員の情報発信などがステマと評価されないよう、社内教育をすすめるべきだと思います。また、インフルエンサーやアフィリエーター等に対して広告作成を委託している場合、適切な『PR』表記を付すことを報酬支払の条件とするなど、必要に応じて契約内容を見直していく必要があるでしょう」(井上義之弁護士)
世の中は広告だらけである。メディアを通じて、何かを見たり聞いたりした場合、それが消費者の購買意欲を掻き立てる広告主の企みである可能性は非常に高い。今回紹介したステマ規制法は広告主を対象としているが、消費者もこれらに対する理解を深めることが、ステマ法規制が浸透するための近道となるのは間違いないだろう。
専門家プロフィール:弁護士 井上義之 (第一東京弁護士会) 事務所HP ブログ
依頼者の置かれている状況は様々です。詳しい事情・希望を伺った上で、個別具体的事情に応じたきめ細やかなサービスを提供することをモットーに業務遂行しております。
記事提供:ライター o4o7/株式会社MeLMAX
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