牛の人工授精時のE2の使い方について質問です。
卵巣の触診をしたときに、黄体が退行し始めると、
PG+E2でプログラム発情を起こさせる方法があるのですが、
黄体が退行するのは自然に任せて、
黄体がほぼ退行したところでE2を打って、
強いサカリをこさせる方法って有効なのでしょうか?
つまり、PGを省いてE2のみを使用して、
PG+E2のようなはっきりとしたサカリを来させることは、
可能なのでしょうか?
不定期(農家に呼ばれた時)にしか卵巣触診できない、往診の獣医とか授精師では、無理だと思いますが、
農家の人間が触診&AIを行っている場合、
うまくいきませんでしょうか?
やりたいことは、鈍制発情をE2だけを使用して、強い発情に変えたいのです。
No.1
- 回答日時:
よほど触診の訓練をつんだ上で、毎日牛の卵巣を触診して黄体の退行を見極め、また鈍性発情の牛を用意して何回かE2を投与する実験を繰り返してタイミングを掴めば理屈の上では可能ですが、無用の手間がかかりすぎて有効とは思えません。
また、その牛が確実に鈍性発情であることも必要です。鈍性発情だと思わせて実は無発情とか黄体遺残というパターンもあります。
実際に鈍性発情に対しては治療もかねてイージーブリード併用した上のPG+E2の方が応用が広いと思います。
この回答への補足
>毎日牛の卵巣を触診して~無用の手間がかかりすぎて
現在、つなぎで60頭ほど飼養しています。
60頭程度ですと、実際妊娠していない数は多くても35頭くらいになりますのでそれほど手間ではないですね。35頭の中には分娩直後の牛も含まれるので、触診すべき牛はもっと少ないですね。
ですから、発情管理は排卵日を確認しておき、次のサカリ(21日後)の前後4,5日を集中的に触診してサカリを見つけるようにしています。
>その牛が確実に鈍性発情であることも必要です。鈍性発情だと思わせて実は無発情
前回のサカリで排卵した卵巣がどちらかを確認しているので、
排卵した側の黄体が退行し始めたら、そろそろサカリが来ると判断するのですが、このとき主席卵胞が見当たらない場合、つまり、鈍性発情か無発情になりそうな場合、E2を打つことによって発情発現しないかと考えています。
>黄体遺残というパターンもあります。
黄体が退行していかない場合(ほとんど経験がありません)は、PGを使用しています。
黄体遺残は一度も排卵が確認できずかつサカリがまったくこない場合に疑います。
>イージーブリード(EB)併用した上のPG+E2の方が応用
手軽に定時授精出来るのですが、コストがかかるのですよね^^;
EBは卵巣停止しているときにしょうがなく使っています。
あるいは、ET時ですね。
ほとんどの場合、PG+E2で済ませています。
結局のところ、コストがかかるのでE2のみで出来ないかな?と思うんですよね。E2は安いですし。
No.2
- 回答日時:
>このとき主席卵胞が見当たらない場合、つまり、鈍性発情か無発情になりそうな場合、E2を打つことによって発情発現しないかと考えています。
そこまで理解されて技術もあるのであれば、また別の話になります。
自然状態では黄体退行後、主席卵胞が発育してそこからE2が分泌されて外部発情兆候、サカリが現れます。
鈍性発情は、定義上主席卵胞が発育してE2分泌されるにもかかわらず、外部発情兆候がはっきりしない状態を指します。
つまり、今問題にしたような「黄体退行後に主席卵胞が見当たらない」場合は、卵胞を見逃しているのでなければ卵巣静止状態になりかけであり、鈍性発情ではありません。E2をうつ意味は薄いと思われます。卵胞がない時にE2を投与して発情を起こしても、どう授精しても受胎しないからです。
黄体退行後に主席卵胞が見当たらない場合は、まず発情がくるか様子を見て、来れば普通に授精(この場合は卵胞見逃し)、こなければ十日後くらいに黄体が出来ているかを確認します。黄体がなければ卵巣静止状態に移行したのであり、イージーブリード等で治療的に処理するべきと思われます。黄体が出来ていれば鈍性発情であり、かつ卵胞見逃しです。
というように鈍性発情でも正常状態でも卵胞はあるので、事前に鈍性発情と確実に判断はできません。従って、やはりPGを用いて黄体をコントロールしないと対応は難しいのではないかと考えられます。
>黄体退行後に主席卵胞が~
わかりやすい説明ありがとうございました。
EB使うときは、分娩してから4,5サカリたっても両方の卵巣が、
米粒みたいになっているときに入れているのですが、
上記の場合にも使用したほうがいいんですね。
機会があれば(あってほしくないけど)やってみます。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
獣医師です。
昔、80頭ほどの繁殖和牛の繁殖管理をしていた時期がありました。
その頃、私も同じようなことを考えてやってみたのですが、あまり上手くいきませんでしたね。理屈では上手くいってもいいと思うのですが。
その理由は、やはり触診でタイミングを確実に掴むことが非常に難しいからでしょう。
人工授精師の講習会の講師をやったときに、何度かと畜場から卵巣を取ってきて卵巣触診の実習をやりました。また、当時はクローンや体外授精の仕事もしていましたので、卵巣を扱うことは多かったです。
その経験から言うと、よほど熟練した人でも卵巣上の卵胞と黄体を正確に識別することは困難です。超音波診断機でも使わない限り、100%確実に所見を取ることは不可能だと思います。
まして主席卵胞は触診では・・・
卵巣に埋まっている卵胞もあるので、表面からの触診で大きさを判定してもかなりの誤差を含みます。まして主席卵胞って必ずしも大きさではないし。
超音波診断機で毎日追跡していると、大きな卵胞が発育してきてこれが主席卵胞かと思っていたら、1両日のうちに突然今まで小さかった卵胞が大きくなってそのまま排卵する、ということもしょっちゅうでした。
結局、PG+E2というプログラムは、触診でホルモン投与のタイミングを正確に図ることが困難だから、そのタイミングをヒト側で作ってやるという意味あいがあるわけですよね。
それでもまだシビアなのでEBも使われるようになってきたわけです。
ま、自分の牛を毎日見ていて・・というのであればあるいは可能か・・とも思えますが、早い話それで1周期逃してしまえばPGどころかEB代まで出てしまいますよね。
コストはかかっても、それで率が上がるならそちらの方が結局安上がり、と思います。E2のみでは、どんなに熟練した人がどれだけ丁寧にやっても、それほど率は稼げないような気がします。年間トータルでPG+E2より経費減になるかどうかは微妙、というかあまり分がよいようには思えないです。
ちなみに当時、体外授精などで毎週かなりの数の生卵巣を触り、目隠しして触ってみたりシリコンのチューブに入れて触ってみたりした結果、私は「触診の卵巣所見はあてにならない」という結論に達しました。
それ以来、AIのときもETのときも、卵巣をあまり真剣に見なくなったのですが(判断は外陰部と主に子宮所見から行うように)、そうしてからETの受胎率が大幅に上がったという経緯があります。
特に黄体は触診でかなりダメージを受けますから、あまりしつこく触らない方が良いのは確実ですし。
>何度かと畜場から卵巣を取ってきて卵巣触診の実習~
1年前にAIの免許を取得したのですが、
AIの講習の中で上記の実習がありました。
当時は初めて卵巣を触ったためまったく解りませんでしたが、
経験を積んでもやはり卵巣触診は精度が悪いのですね。
卵巣触診はかなり上手くなったと思っていましたが、
天狗になっていたようで凹みました。
>超音波診断機で毎日追跡していると~
サカリの時期に子宮充血が+++で粘液もドボドボこぼすのに、
いくら触っても卵胞が無いときがあるのですが、
上記のような状態になっているんですね。
この場合は、卵胞が見当たらなくてもAIはしたほうがよさそうですね。
大変参考になりました。
>特に黄体は触診でかなりダメージを受けますから~
黄体は卵胞のように触診中に誤って破砕することが少ないので、
グリグリ触っていましたが、よくないんですね。
AI後、1サカリ、2サカリ時に黄体が退行していないかチェックしているんですけど、あまり無理しないほうがよさそうですね。
No.4
- 回答日時:
Jaga39です。
>天狗になっていたようで凹みました。
私もその当時は同じ思いを味わいました。いくらなんでも黄体と卵胞の見分けくらいは100%間違いないと思っていたのですが、それすらも一定の確率で間違えていました。
素手で生卵巣を触診すると、それでもかなりの確率まで上がるのですが(それでも識別できない卵胞や黄体はありました)、直腸とウンコ越しでは・・・
>この場合は、卵胞が見当たらなくてもAIはしたほうがよさそうですね。
卵巣実質に「埋まっている」卵胞もありますしね。
目視ですら卵巣表面上の5mmもない小卵胞にしか見えないものを割面を入れると2cm近くの大きな卵胞、ということは別に珍しくありませんでした。こんなの触診では絶対に判らない。
なので外陰部所見と子宮所見が適期を示していたら、卵巣所見がそれと合わなくてもAIすべきだと思います。卵巣で妊娠するわけじゃありませんから。
ETもそうで、外陰部と子宮所見が良好な黄体期を示していれば、黄体が小さかろうが固かろうが気にせず移植するようにしてから、受胎率が急激に上がりました。
なのでそのうち卵巣所見自体をあまりマジメに取らなくなりましたね。
黄体をあまり強く触診しない方が良い、とはよく言われます。
昔繁殖技術の研修に行った某県の共済では、このくらいの力で触診してもへっちゃら、と指先を握って力加減を教えてくれましたが、それはかなり強い力でした。
しかしよく考えると、指などの筋組織と違って内分泌器官ですからね・・・いいわきゃない、と今は思います。
排卵確認もしないに越したことはない、という人もいます。
排卵した後の顆粒細胞が黄体細胞になるわけですから、それを触診してダメージを与えれば黄体形成に悪影響がある、というわけです。
まあ、こういう繁殖関係のことは、コントロールされた実験環境を整えることが非常に難しいので、何が確かなことか確信することは難しいです。
例えば、ETのときは黄体側の子宮角に受精卵を入れた方が良い、という報告があります。数百のデータで有意差もちゃんと出てるデータです。
でも逆に「移植する子宮角はどちらでも受胎率は変わらない」という報告もあるんですよ。こちらも統計的にちゃんとしたデータに見えます。黄体確認なんかしない方が良いという報告もあれば、発情5日目と7日目にきちんと確認したら受胎率が上がったという報告もある。
つまり、実験要素以外の要素を排除できないため、生体そのものを扱う試験に共通ですが、要するに「よく判らない」ということです。
自分の経験で積み上げていくしかないんでしょうね。ここで私が書いたことも含めて、あまり人の言うことを信用しない方が良いですし、時には自分さえも信用しない柔軟さは持っていた方が良いと思います。
いろいろアドバイスありがとうございました。
>卵巣で妊娠するわけじゃありませんから
なるほど、名言ですね。
卵巣触診は参考程度で、牛の総合状態から判断してAIしていきたいと思います。
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