こんにちは。お尋ねします。
240条で3ヶ月以内に落とし主が現れない場合は、所有権は拾得者に発生するかと思います。
一方で、193条では落とし主は2年間、現占有者に対して回復請求できるとの記述がございます。
両条文から考えますと、「拾得者は拾ってから3ヶ月経って所有権を獲得したとしても、あと21ヶ月は落とし主から返せと言われたり、弁償しろと言われる可能性がある」と規定しているのでしょうか?
そうだとしますと、240条で得られる所有権は暫定的というか、無意味なのではないでしょうか?
両条文の関係をご教授ください。宜しくお願い致します。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
第二百四十条 (遺失物の拾得) 遺失物は、遺失物法...の定めるところに従い公告をした後三箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。
では、拾得者(所有権を取得するもの)が当該物が“遺失物”であることを知っている(自身が拾ったなど)ことが条件です。
第百九十三条 (盗品又は遺失物の回復) 前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
が適用されるには、“前条の場合において”
第百九十二条 (即時取得) 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
が成り立っている必要があります
このばあい、“善意で”あることが条件であり、つまり“権利を取得するもの”は当該物が“遺失物である”ことを知りません(これが“善意”)、従って、第二百四十条と第百九十三条が同一人物にたいして同時に適用されることはありえません(当該物が遺失物であることを知っていると同時に遺失物であることを知らないことは、不自然です)。
従って、“240条で得られる所有権”は恒久的なもの(その手続きに遺漏が無い場合に限られますが)です。
第百九十二条の場合は“取引行為”の相手方が適法に所有権を得ていない(遺失物の場合は、その過去のどこかで、だれかが遺失物法に従わず、不適切な方法で占有をはじめたはず)ので、最終的に購入した人物も適法な所有権を有さないため、遺失者がその回復を要求できます(但し無制限な回復要求は社会の安定に悪影響を及ぼすので、2年間の制限があります)。そして回復された占有者はその前の占有者に対して求償する権利を得ます。
また、同条の特例として
第百九十四条 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
の場合は、最終的占有者の過失(適切な所有権があることを確認しないで買ったこと)を認めるのは無理がある(予見可能性が無い)ので、回復には代価の弁償を必要としています。この場合代価を支払った遺失者は当然に最初に拾って、遺失物横領を行った人物に損害賠償請求を行うことができます。
No.2
- 回答日時:
民法193条が適用になるのは、民法192条の即時取得が成立することが前提です。
事例を挙げて説明します。甲は道ばたに落ちていた乙所有の時計を拾ったが、先日、甲が紛失した自己の所有する時計とあまりにもそっくりだったので、自分が落とした物と誤信して、そのまま所持した。
1.乙は甲に対してその時計の返還を求めることができるか。
乙は甲に対して、「いつでも」、所有権に基づく返還請求をすることができます。
甲が乙所有の時計を自分の物と誤信し、そう誤信することについてたとえ過失がないとしても、甲はその時計を即時取得することはできません。なぜなら、甲はその時計を取引行為によって占有を取得したからではないからです。
もっとも、甲が自分の物ではないことに気付いて、警察署に遺失物として届出をして、遺失物法及び民法第240条によりその所有権を取得した場合、あるいは時効により時計の所有権を取得した場合は、乙は甲に対して、その時計の返還を請求することはできません。
2.甲が、乙に所有権のある時計を自己の物と称して丙に売却し、丙がその時計の引き渡しを受けた場合、乙は丙に対してその時計の返還を請求できるか。
丙が、その時計を甲に所有権がある(甲に処分権がある)と誤信し、そう誤信することに過失がない場合、即時取得が成立します。1.の場合と違って、丙は取引行為(甲丙間の売買契約)により、その時計の占有を取得したからです。
ただし、乙がその時計を落としてから2年間は、乙は丙に対してその時計の返還請求をすることができます。これが民法第193条の意味です。
民法
(所有権の取得時効)
第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
(即時取得)
第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
(盗品又は遺失物の回復)
第百九十三条 前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
(遺失物の拾得)
第二百四十条 遺失物は、遺失物法(平成十八年法律第七十三号)の定めるところに従い公告をした後三箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。
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